企業がストレス・メンタルヘルス対策を導入する意味と意義~その3

企業としてストレス対策をする上で大事なこと、注意点などは?

企業として従業員のストレス対策、メンタルヘルス対策を実施する上で一番大切なのは、ストレスを労使の対立の原因にしないこと、誰もがちょっとした心掛けで対処可能であるということと、対処するきっかけや方法を従業員に伝えることが大切でしょう。

 企業としてできる具体的な方法としては、職場環境に働きかけるものと、従業員自身に働きかけるもの(従業員の自発的なストレス対処行動のきっかけになるもの)があるでしょう。

 職場環境(ハード面)への働きかけに関しては、職場に観葉植物を置いて視覚を通じて、また、音楽を流し聴覚を通じて従業員の集中やリラックスをサポートすることや、職場でのアロマの導入は嗅覚を通じてストレスを感じている精神的緊張を和らげたり、デスクと休憩所を空間的に区切ることも効果的だと思います。また、デスクをフリーアドレスにするは、業務の効率化以外にもメンタルヘルス的には、日々(同じことの繰り返しではなく)新鮮な気持ちで職場で過ごせるメリットがあることをあげさせていただきます。

 一方、従業員への働きかけ(ソフト面)については、年間1000人の働く人との面談をしている産業医の立場から提言があります。

 私は産業医として、ストレスの原因は何か?と考えることの大切さを否定する気はありません。しかし、新制度の開始と共に、「ストレス」について新しく考え直してみることも大切と思います。

 同じような(労働)環境で働きながらも、ストレスに悩みメンタルヘルス不調になってしまう人とストレスに上手に付き合っている人がいます。同じ環境で働くストレスに悩まされない人たちは、ストレスをどのように捉えどのように対処しているのか、そこにフォーカスしてみるのも有効だと考えます。そのようなストレス対策の方が、企業内でオープンに、明るく楽しく前向きに話しやすいのではないでしょうか。

 ストレスの原因や責任の所在を追求するばかりではなく、うまく対処している同僚達はどのように対処しているのかをみんなで話し合える企業文化を作ることが、企業担当者に求められていると考えます。

文責:武神 健之
一般社団法人ストレスチェック協会 代表理事
医師、医学博士、日本医師会認定産業医