企業がストレス・メンタルヘルス対策を導入する意味と意義~その2

今後、衛生法改正によって企業のストレス対策はどのように展開していくか。また、どのようになっていくべきか。

 ストレスチェック制度が始まり、従業員が50人以上の事業場は年に1回、制度の実施が義務づけられました。新制度は今後、企業の安全配慮義務の観点からも、その実施時だけでなく、後々も重要なものとなるでしょう。
 従業員が脳梗塞や心筋梗塞を起こしたとき、その従業員の過去の健康診断やその後の措置(事後措置)の記録が掘り起こされることがしばしばあります。今後は同様に、従業員のメンタルヘルスが理由と考えられる休職や自殺の際には、ストレスチェック制度の記録が求められることになるでしょう。
 では、企業は新制度の始まりによって、今以上にメンタルヘルスリスクを負うだけなのかというと、決してそうではありません。
 企業に安全配慮義務があるのと同様に、従業員には自己保健義務があります。従業員自身も自己の心と体の健康維持に努める義務があるのです。ですので、今後は企業も従業員もそれぞれが心と体の健康に責任を持つ認識と、心の体の健康に主体的に取り組めるような雰囲気作りが大切でしょう。


 
具体的な方法としては、企業のストレス対策も、このストレスチェックテストの実施時期に沿って展開するのが自然と考えます。年1回の体の健康診断(定期健康診断)の時に、誰もが自分の健康について考えるように、今後は年1回ストレスチェックテスト受検時に誰もが自分の心の健康について考える時代となるので、そのタイミングを利用しない理由はありません。

文責:武神 健之
一般社団法人ストレスチェック協会 代表理事
医師、医学博士、日本医師会認定産業医