登山から考えるストレスマネジメント

 2016年8月11日、新しい祝日「山の日」が誕生します。8月に祝日ができるのは初めてのことです。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを目的に制定されました。

 「山」と言えば3年前のこの時期、夫婦で富士山登山に行ったのでした。2人とも富士山初挑戦。なんとか7合目(標高3000m)付近まで登ったものの、天候の悪さも手伝い登頂を断念。そのときは、もう挑戦する機会はないかなと思っていたのですが…。

■2度目の富士山挑戦
 7月の三連休を前に、夫が「やはり富士山登頂リベンジしたい」と言い出しました…。なんでも、「日常の喧騒から離れ、新鮮な気持ちを味わいたい」のだそうで…。山の日を前に、2度目の富士山へと挑戦してきました。

 ちなみに富士山登山ルートは4つあり、前回に引き続き選択したルートは「御殿場ルート」。どのルートも登山スタートは5合目からですが、御殿場ルートのスタート地点「新五合目」は名前だけ。実際は2合目相当で、他の3ルートに比べ格段に低い標高(1440m)からのスタート。さらに、休憩場所である山小屋が標高1520mから7合目(標高3000m)過ぎまでひとつもないという過酷さ。何度となく途中で下山したい衝動にかられたものでした。

 そんな筆者が、今回は何とか頂上まで行きつくことができました。天気に恵まれたのもありますが、もうひとつ、大きな理由があったように思います。

■目標の細分化
 その理由は、「スモールステップ」です。つまり、目標を細分化させながら進んでいけたということです。富士山ともなれば、最終ゴール地点である山頂ははるかかなた。頂上だけを一心に目指していたら、一向に近づかないことから心が折れてしまうかもしれません。

 そこで、ルート中に定期的に置かれている「現在地番号が書かれている標識や標柱」をスモールステップに定めました。現在地番号(G-079、G-090など)がひとつずつ増えるのを確認し、登り始めからいくつ進んだと自分を鼓舞し続けました。そして、「ここまでたどり着いたらお菓子を食べよう」「ここまでたどり着いたら少し休憩しよう」などと、自分に小さなご褒美を与えました。このように(やや大げさではありますが)小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高めていくことが、次のステップで頑張ろうというモチベーションに繋がるのです。

■登山から考えるストレスマネジメントのコツ

1. 空間を「区切る」
 筆者が日本ストレスチェック協会のストレスマネジメント入門講座等でお伝えしていることのひとつに「区切る」ことの大切さがあります。区切り方は様々ですが、登山の場合は自身のいる空間を「垂直方向」に区切ることにつながります。

2. 「非日常」を作り出す
 筆者の夫がいみじくも「日常の喧騒から離れたい」と言いましたが、まさにこの「非日常」、新しい出会いを意識的に作り出すことによって、気持ちをリフレッシュすることができます。

3. 身体を使う
 登山は長時間の有酸素運動です。登山に限らず、ジョギングやハイキング、サイクリングのように一定のリズムで身体を動かす有酸素運動は、心身のバランスを保ちストレスに強くなることが知られています。

 このように、登山はストレスをうまくマネジメントする格好の機会と言えます。最近運動不足だという方、新たな刺激が欲しいという方、イライラしがちな方、新しい祝日ができるこのタイミングで挑戦してみてはいかがでしょうか。

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文責:浅賀 桃子(あさか ももこ)
ベリテワークス株式会社 代表取締役
https://www.verite-office.jp/about-verite-office/profile/
心理カウンセラー/キャリアコンサルタント
日本ストレスチェック協会シニアストレスマネジメントファシリテーター