パワハラ職場での自己防衛策【前編】

こんにちは。産業医の武神と申します。

私は主に外資系企業で年間1,000人を超える働く人と、心と身体の健康相談をしています。

中には、パワハラに関する相談も多数あります。
新型コロナ感染症の影響で在宅勤務の増加に伴い、
上司と接する時間が短くなったこともあり、パワハラ相談は減っていますが、
6月1日に労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行され、
パワーハラスメント対策が事業者の義務となりました。

そこで今回は、職場のパワーハラスメントへの自己防衛策について
お話させていただきます。

●そもそも職場のパワーハラスメントとは?

ハラスメントとは、一般的には、いじめや相手の嫌がることをすることです。

そして、職場においてのハラスメントは、
職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、
精神的・身体的苦痛を与える行為と考えられています。

具体的には、仕事上のミスを指摘するのではなく、容姿や性格、
あるいは建設的ではないことや答えようのないことなどを、
大きな声で繰り返し攻め立てること言います。

ハラスメントを受けると、がんばっている人ほど
「自分は認められていない」と傷つき、落ち込みます。
そして、自分の存在価値を必要以上に落としてしまい、
自分への否定(自己肯定感の低下)、
現状への否定につながり、精神疾患を発症させるきっかけとなるのです。

孤独感から他人に相談できなくなり、ひどい場合は、
自殺に至るケースもあります。

●パワハラ職場でつぶれないための自己防衛

そのような中、個々人ができることは、
パワハラがひどくなる前に「自分で対処する」につきます。
ここでは、あなたがハラスメントから身を守るための
処方箋3つ提供させていただきます。

・処方箋1:ルール確認

まず、最初の処方箋は、会社のルールを確認することです。

他人同士が共通の目的のために集まる組織では、
そのためにルールがあります。
あなたの会社のルール、就業規則やハラスメントに関する
ポリシー等をぜひ一度ご確認ください。

そして、そのルール等々に納得できる会社で働きましょう。
ルールがない会社で働き続けるというのは、
誰のせいでもなく、あなた自身の選択の問題です。

処方箋2:仲間を作る

2つめの処方箋は、軽度なハラスメントから身を守るためのものです。

それは、我慢しないで仲間をつくることです。

ハラスメントを受けた時、我慢して黙っていると、
相手の行動はますますエスカレートします。
ですので、我慢せずに、あなたの感情を表現してみましょう。

「そう言われると辛いです」「これってハラスメントですよね」
「そんなこと言われると泣きたくなります」と言ったり、
実際に涙を流してもいいと思います。

こうしたアクションは、自覚なくハラスメントをしている人にはけっこう効果的です。

そして、自分の気持ちを打ち明けられる信頼できる仲間
(人間関係)をつくりましょう。
辛い気持ちを聞いてもらうだけでラクになるはずです。

特に、職場の複数の人間が同じ人からパワハラを受けている場合は、
被害者同士での連携で救われる部分は大きいです。
もちろん、根本的な原因が解決されるまでの一時的なものに過ぎませんが。

・処方箋3:重篤化するときは記憶よりも記録

3つめの処方箋は、前述の処方箋が効果なく、ハラスメントが
継続的に続く場合、重篤化する場合への処方箋です。
まずは、身を守るために記録をつけましょう。

社内規定に注意しつつ、録音・録画、メール等を印刷して
保存するなど、いつどこでどのようなハラスメントを受けたか、
しっかり記録するのです。
また、その場面に居合わせた人についてもメモしておきましょう。
後々の調査に役立つことがあります。

ハラスメントには一人で対処せずに、信頼できる仲間を見つけて
相談
することが大切だとお伝えしましたが、
陰湿なハラスメント、解雇、お金などが関係する場合は、
労働組合を通じて会社に伝えることも選択肢の1つです。