産業医が明かす ストレスに強い人はどんな子供時代を送ってきたか③

前回の続きです

では、この非認知能力はどのように身につけられるのでしょうか。
非認知能力を育む子育ては、決して特別なものではありません。
非認知能力は、身に付けるのは、就学後よりも未就学児が効果的と言われています。
また、成功や失敗などの体験から得られることが多いと言われています。

未就学児であれば、好きなだけ好きな遊びに集中して取り組ませてあげること、
親(大人)と一緒に絵本の読み聞かせや、料理・掃除・お片づけなどのお手伝いをすること、
たくさん褒められること、うまくできることだけでなく
許容範囲内でうまくいかないことも経験することなどで育まれると言われています。

就学後の非認知能力は、コミュニケーションを中心とした、様々な体験活動を継続できると育まれます。
ただし、子供の生活圏は成長とともに家庭よりも学校や友人関係に広がっていきます。
ですので、就学前のように“家などで親(大人)と”という活動よりも、
学校や地域における好きなクラブ活動などで、仲間たちとともに、
挑戦・成功・失敗などの体験を継続することで、周囲との協調や思いやりを含めて身につけられるのだと思います。

学生時代にインターハイ出場経験のある人、元プロのスポーツ選手などが、
非認知能力が高いことは想像しやすいかもしれませんね。
私は、e-sports(いわゆるテレビゲーム系)の世界チャンピオンや、
芸術系での長年の経験を持ち、ストレスに強い大人もたくさん見てきました。
ストレスに強い大人になるために、非認知能力を高めるために、
特定のスポーツがいい・悪い、
どのような活動は良くない・勧められるなどはありませんでした。

大切なことは、子供(学生)時代に、好きなことに仲間たちとともに継続的に没頭してきたという経験です。
子供(学生)時代に、コミュニケーションを含む、成功や失敗や挑戦など様々な体験活動を継続していた人は、
その際に、3つの感情(好きや楽しさ、達成感や悔しさ、協力や思いやり)のサイクルを何度も経験しています
そのような人間は、好きなことをやり続けている中で、知らず知らずのうちに、
真面目に集中すること、体を動かすこと、他人と協調すること、試行錯誤すること、
転んでも起き上がることなどを身につけるのです。
その結果、子供から大人へ、勉強から仕事への変化にも適応できるのだと推測します。

好きな遊びを続ける、好きな部活動を続ける、好きな絵画やボーイスカウトの活動を続ける、、、
このような好きなことを継続する中で、上記の3つの感情のサイクルが自然と回ります。
そして、非認知能力は育ちます。
大人にできることは、このような3つの感情のサイクルのことを理解し、
3つの感情のサイクルが回っていることを確認し、回り続けるように子供を支援することなのだと思います。

2020年春から小学校における指導要領が改訂されます。
今の時代を見据えた新しい指導方針には、大いに期待したいところです。

それと同時に、学校以外の場面でも、現在の大人たちがこのようなことを認識し、
未来の大人たちがストレスに上手に対処できようになれるよう、関わって欲しいと思います。

元気に働き続けることができる人を増やすため、
子供時代からストレスに強くなれるような子育ての大切さを、産業医としても感じる今日この頃です。