長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられているだけでなく、脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的知見も得られているところです。
また、業務における強い心理的負荷による精神障害により、正常の認識や行為選択能力が著しく阻害され、あるいは精神的抑制力が著しく阻害されることによって自殺に至る場合もあると考えられていることからも過労死等との関連が深いとされています。
過労死等については、近年、社会問題化してきています。
過労死等防止対策推進法の施行
過労死等の防止のための対策を推進し、過労死等をなくし、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として、過労死等防止対策推進法が成立し、平成26年11月1日から施行されています。
そして、この法律に基づき、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、「過労死等の防止のための対策に関する大綱(以下、「大綱」といいます)」が平成27年7月に閣議決定され、公表されています。
大綱における重点対策とは
大綱においては、具体的にそれぞれの主体が取り組むべき重点的な対策が述べられています。
まず、過労死等の防止のための対策を推進する責務を課されている国に対しては、過労死等事案の分析などの調査研究等を実施するとともにその結果について発信することとしています。
併せて、国は、労働条件や長時間労働の削減のための啓発や相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援を実施していくとしています。
そして、会社に対しては、安全配慮義務等を根拠として、従業員を雇用する者の責任として、過労死等を防止するための対策に努めるよう促しています。
対策としては、経営層が過労死等を発生させないという決意を持って関与し、働き方の改革や年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組等の推進などが挙げています。
さらには、従業員が必要に応じて産業保健スタッフ等に相談できるようにするなど、専門的知見を活かせるような体制づくりについても求めています。
相談体制の整備等
国が取り組む重点対策の一つとして、相談体制の整備等が掲げられています。
さきに開設された「こころほっとライン」(ストレスチェックニュース内『「こころほっとライン」って何?』参照)では、過重労働による健康障害に関しても相談が可能となっていますので、相談体制の整備の一環として捉えてよいかもしれません。
会社においても、事業場外資源の一つとして従業員に対して情報提供していくのも良いかもしれません。
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中山寛之(なかやまひろゆき)
中山社会保険労務士事務所代表 http://nsr-office.biz/
特定社会保険労務士