傷病手当金という制度について

傷病手当金とは、疾病や負傷による休業・休職中に被保険者(従業員)とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。
そのため、メンタルヘルスの不調により従業員が会社を休み、十分な報酬等が受けられない場合にも受給することができます。

支給要件とその期間は

傷病手当金を受給するためには、①業務外の疾病や負傷で療養中であること、②療養のため労務不能であること、③4日以上仕事を休んでいること、④(原則として、)給与の支払いがないこと、のいずれの要件をすべて満たす必要があります。
メンタルヘルスの不調による休職等の場合には、長期の療養が必要になる場合も多く、傷病手当金がいつまで支給されるのか、その期間についても留意しておく必要があるでしょう。
支給される期間は、同一の傷病について、支給を開始した日から最長1年6ヵ月間となります。すなわち、支給開始から1年6ヵ月の間に復職し、傷病手当金の支給を受けない期間があったとしても、支給開始日から1年6ヵ月後には同一の傷病による支給期間は満了するという意味です。

傷病手当金の額

傷病手当金は、1日につき被保険者である当該従業員の標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。標準報酬日額とは、標準報酬月額の30分の1に相当する額です。
なお、給与の支払いがあっても、その額が傷病手当金より少ない場合には、傷病手当金と給与の差額が支給されることになります。

同一の傷病による再発等の場合

メンタルヘルス不調の場合、再発なども懸念されるところです。
同一の傷病による再度の休職等の場合で、最初の支給開始から1年6ヵ月を経過していた場合にはどうなるのでしょうか。
行政通達によれば、「同一の疾病又は負傷」とは、「1回の疾病又は負傷で治癒するまでをいうが、治癒の認定は必ずしも医学的判断のみによらず、社会通念上治癒したものと認められ、症状をも認めずして相当期間就業後同一病名再発のときは、別個の疾病とみなす」とされ、「通常再発の際、前症の受給中止時の所見、その後の症状経過、就業状況等調査の上認定」するとされています。
つまり、同一の傷病であっても別個の傷病として取り扱われる可能性もあり得ることから、保険者(協会けんぽ等)に確認する必要があるでしょう。
従業員が休職期間中に安心して療養に専念できるよう、傷病手当金などの経済的な保障に関する事項についての正確な情報提供も会社としての必要な支援の一つといえるでしょう。

——————————————————————————————-
中山寛之(なかやまひろゆき)
中山社会保険労務士事務所代表 http://nsr-office.biz/
特定社会保険労務士
——————————————————————————————-