小太り産業医:「明けましておめでとう。初夢は何を見たの?」
人事担当者:「おめでとうございます。初夢で何を見たのかは言いませんよ!」
小太り産業医:「最近は、夢から覚めないおじさんが増えてきていると思うねぇ~。」
人事担当者:「先生も、良く白昼夢を見てますよね!」
ここ数年、小太り産業医は「夢見るおじさん」「スイーツおじさん」との面談を数多くこなしてきました。
まずは「夢見るおじさん」の解説と症例紹介からしてみましょう。
以前から、私は講演会なので「夢見るおじさん」をよく話していました。
それは、エピソードに事欠かないこと、
あまりにも似たような性格の傾向にあるおじさん従業員が多いからです。
小太り産業医の「夢見るおじさん」の定義として、
・過去の栄光にしがみついている(賞などをもらったなど)
・まだまだ、若い者には負けていないと思っている(開発などによくいらっしゃいます)
・会社は自分のポテンシャルを活かし切れていないと思っている
・とにかく、自己肯定感、自己評価が高い
・何かあると責任転嫁、他己責任的発想になる
これらの背景があり、メンタルヘルス不調に陥った、40代以降の「おじさん」です。
多くの場合は、休職に至った場合の診断書には「適応障害」と記載されています。
「夢見るおじさん」は自分を客観視する事が得意ではないか、避けていると思われます。
症例①
45歳男性
20代後半で開発部門で社長賞をもらっています。
30代に後半から開発部門の管理職として職務を続けていたが、
やはり自分は開発の最前線に立ちたい!と希望し、あえて降職を選択しました。
しかし、開発部門で発送豊かな20代の社員に勝てるわけもなく、
どんどん焦りが増し、不眠に陥ってしまい私の前にやってきました。
産業医面談中はいかに自分がかつて優秀であったかを延々と話し続け、
現部署とは違う開発部門へ異動すれば、もっと自分はパフォーマンスが出せるはず!と語り始めました。
そして、ついには無理矢理管理職に上げた会社が悪い、
あのまま現場で働いていたらもっとパフォーマンスが出せていたはず。
管理職に上げられたせいで開発の機会と能力を奪われた!と言い始めたのです。
彼は結局休職に入り、案の定「適応障害」の診断書を提出してきました。
小太り産業医から言わせれば、「逃避行動」以外何者でもないのですが。
彼と何度か面談し、自分を客観視するように仕向け、時には厳しいことも進言しました。
しかし、結局彼は「自分のポテンシャルを活かすため、フリーランスのエンジニアになる!」と言って会社を辞めてしまいました。
その後は不明です。
症例②
50歳男性
SEとして働いてきており、SEとしての能力自体は確かに高いのですが、
その高さ故にミーティング中に他の人の前でミスを大げさに指摘することで有名でした。
管理職の能力としては疑問符が付いていたため、この年になっても管理職ではなかったのです。
本人も管理職になるための研修を真面目に受けておらず、
昇進試験も合格点に達することはありませんでした。
しかし、周囲がどんどん管理職になっていき、
ついには自分の直上司が年下になったことに焦りを覚え、
昇進の希望を出しましたが会社は彼の管理職としての能力を疑っていたので、昇進させませんでした。
とある大きなプロジェクトチームを立ち上げるにあたり、
チームリーダー(課長)を社内公募したところ彼が応募してきました。
そして、いろいろな”力”が働き(あえて書きません)、チームリーダーに就任しました。
しかし、就任後半年で休職に入ります。診断書に書かれた病名はやはり、「適応障害」でした。
復職面談を行ったところ、
まず開口一番「今回の原因は、自分の意を汲んでくれなかった部下のせいで自分は病んだ」と言い放ちました。
自分は管理職として能力があるのに、部下がポンコツだったからこうなった!と自己弁護を繰り返していました。
そこで、小太り産業医は自分でも会心の一撃とも言える質問を本人に投げかけたのです。
ポンコツ部下を育てて、使えるようにすることが優秀な管理者ではないのですか?」
その後、彼は黙ってしまいます。
結局、私の一撃で”一旦”夢から覚めた本人の希望もあり、職制を一つ落として復職しました。
しかし、復職から半年経過したところで面談してみると、
「やはり、自分は管理職に向いている」と言い始めています。
なかなか、夢見るおじさんは強敵です。また、管理職になる夢を見ています。
会社は本人の能力とさらに実はポンコツと名指しした部下もメンタルヘルス不調者に追い込んでいるので、
管理職には上げるつもりはないようです。
相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」ではないです。
「夢見るおじさんではいられない」のです。
次回は、スイーツおじさんについてお話しします。
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文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
代表取締役 所長
認定産業医/労働衛生コンサルタント
認定内科医/循環器内科専門医
日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
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