新入社員にこそ伝えたいこと

あなたの会社の新入社員たちは、夏になっても元気ですか?

毎年、多くの会社で”新社会人”が4月に会社に入社してきます。産業医として新人研修でお話をさせていただく機会をいただくこともあります。4月の研修時は、ほとんどの新入社員たちは、希望とやる気に燃えていて、あまりメンタルヘルス(予防)的な話を聞く心の準備はできていません。

だいたい夏くらいになると、3ヶ月間働いてきた疲労や、夏休みに学生時代の友人たちと会って飲んだ時の話などの影響もあり、ちらほら元気のない社員がでてくるように感じています。

私が担当するクライエント企業では、このような時期にこそ、4月入社の新人の方々との産業医面談をオススメしています。過重労働面談ということで、あえて面談に呼ぶこともあります。

今回は、そのような機会にしたお話の一部をご紹介させていただきます。

今まで、多くの新社会人さんたちは、表現方法は様々であるものの「他人と比べての自分」による自己評価で生きていました。偏差値教育の世の中では、仕方ないことかもしれません。
しかし、社会人となったこれからは、「自分と比べての自分」でやっていける人の方が、ココロの健康管理が上手にできます。

最近の若い人たちは、成長過程で偏差値、受験、結果主義的な要素の中でほめられ、おだてられ、育ってきています。その結果、大きな壁にぶつかったときに、すぐに周りを見渡し、周りが対応できているとそれを真似するのではなく、「自分は出来ない」、という評価をしてしまいがちです。
その”大きな壁”ですら、本当は、大きな壁とは呼べないものであることも多いことも皮肉です。また、そんな場合に、周囲が自分を助けてくれない、指導してくれないと、どんどん、落ち込んでいってしまいがちです。

本来であれば、他人がどういった状態であろうと、関係ないはずですよね。自分の仕事ですから。
本当は、「今の自分」が「どういった状態であるか」が大変重要なのです。過去の自分よりも頑張っているか、過去の自分よりも前進しているか、そこにフォーカスする必要があります。

そして、高い自己効力感(self efficacy)をもって、「自分は出来る」という、揺るがない信念をもって対処して欲しいと思います。

今までクラスの中でトップ10%だった人も、その会社に入った時点で90%の人は、トップ10%から脱落しています。
今まで平均よりも上だった人も、新しい集団ではすでに半分の人は、平均以下に落ちています。

つまり、他人と比較することは意味がないことなんです。

自分が上位10%に入っていないことや平均以下であることをポジティブなエネルギーに変えられるのならば、いいのではないか。という意見も聞こえてきます。

はたしてそうでしょうか。
そんなことありません。

なぜなら、そのような考えの人は、所詮、その比較した他人を越した時点で満足して現状維持になってしまいます。さらなる進歩がありません。

 だからこそ、「自分を人と比較しない」習慣が大切です。

このことをぜひ、あなたの会社の新人にも、お伝えいただければと思います。

以上、あなたとあなたの会社のココロとカラダの健康管理にお役に立てば幸いです。

文責:武神 健之
一般社団法人ストレスチェック協会 代表理事
医師、医学博士、日本医師会認定産業医