みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。
先日、「みる・きく・はなす・ほめる」を実践されている経営者の話を聴く機会に恵まれました。企業がブースを出して自社商品を紹介する展示イベントの際、何人かの経営者に、社員にどんな声をかけているのか、社内でどんな言葉が交わされているのかたずねてみました。
「ウロウロして、ちょっと声かけるだけだよ。『何やってるの~?』って。そしてみんなに『ありがとう』と言ってるんだ」
「うちの若者たち、すごいんだよ。女性たちが素晴らしい。ほんとによくやっている。だけど、『早く帰りなさい』って言ってるんだ。そうしないといつまでも仕事するからね」
「仕事を任せるといいね。伸びるよ。ちょっと上をやらせるといいんだよ」
と育成のコツを語ってくれました。
上記は、海外の日本庭園も手掛ける歴史ある造園会社の経営者(70代)のお話です。自分を「植木屋」と名乗り、「職人の社会的地位を上げる」との理念を持っています。
また、経営するのは「珈琲屋」で、自身を「珈琲マン」 と言っていた30代の経営者は、
「人を育てるのがぼくの役目。人と珈琲だけは勝ちたい」
「働いている人が、どうしたらワクワクするのかな?といつも考えている」
と語り、
「うちはみんなが一生懸命。とにかくよくやっている。これには自信がある」
と社員自慢を気持ちよく聞かせてくれました。
「他人の喜びを自分の喜びとしよう。そのためには、まずは自分から」
と、自分自身がハッピーになることが大切と社員と語り合っているそうです。
日本ストレスチェック協会のメンタルヘルス入門講座「みる・きく・はなす技術」では、「メンタルヘルス」の観点から職場内コミュニケーション・上司と部下の関係におけるコミュニケーションについてお伝えしています。どちらの企業もまさに、この「みる・きく・はなす」を日常でなさっていました。
講座では、「はなす技術」のなかで「期待を示す」ことを取り上げています。上司が自分の胸のなかで「部下の〇〇さんに、こうなってほしいと期待する」だけでは、その期待は○○さんに伝わりません。自分が持っている期待を、相手に「示す」ことをしないと伝わらず、伝わらない限り○○さんは、「自分に対して上司がどう思っているのか、何を期待しているのか」は分かりません。
上司の期待が部下に伝わり、部下が上司の期待に応えるべくがんばろうと思ってくれるようになるには、信頼関係があることが必要です。そのために、「『ほめる』の日常化」をおすすめしています。
「ほめる」行為は、プラスのストロークです。ストロークとは、「あなたがそこにいるのを分かっていますよ」を伝える働きかけのこと。交流分析理論を提唱した精神科医のエリック・バーンは、「人は何のために生きているか、それはストロークを得るためだ」と述べています。
「昨日は遅くまでありがとう。おかげで今日の会議に間に合ったよ。あなたがまとめてくれた○ページの図表、ほめられたよ。次回もよろしくたのむね!」は、プラスのストロークです。「遅くまで」は、部下を観ているからこそ言えること。「ほめる」には、「観る」ことが必要です。そして、部下ががんばってくれた、その結果がどうだったのかを、そのときに本人に伝える。会議でほめられたことも本人に伝え、次回もたのむよと、期待も示す。さらに、感謝の気持ちの「ありがとう」を忘れない。
「ありがとう」はプラスのストロークです。こうした上司からの言葉かけが信頼関係づくりに欠かせないものです。「他の人がほめていた」を伝える方法でも、効果的な「ほめる」となります。部下は上司からのプラスのストロークを求めています。
一方、ストロークには、マイナスのストロークもあるということを書き添えておきます。「部下が声をかけているのに、PC画面から目をそらさずロクに返事もしない」とか、「腕組み仁王立ちで仕事の指示を出す」とか。これらは、上司に対する不信感を醸成しますので、気を付けましょう。
信頼関係を築くためのプラスのストロークは、「みる・きく・はなす・ほめる」の実践でもあります。「ありがとう」の言葉かけを増やしましょう。上述のイベントの際、一番多くあがった言葉は、「ありがとう」でした。
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奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/
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