(第5回) メンタル不調への対応【前編】

 こんにちは、産業医の武神と申します。私は主に外資系企業で毎年年間1,000人を超える働く人と、心と身体の健康相談をしています。

 コロナ禍で2回目の新年度が始まろうとしています。最近の産業医面談を通じて感じるのは、新常態に慣れた人、慣れることができない人、どちらもなぜだか気持ちがすっきりしない、ある程度の不安やストレスを感じていることこそが、普通になってきたということです。

多くの場合、新常態にしなやかに対処対応できている人も、ときに、上手に対処できないこともあります。きっとあなたの周りの人も、同じかと思います。

そこで今日は、自分の周囲の人にメンタル不調っぽさを感じたとき、とってほしい初期対応について3つお話させていただきます。

●声の掛け方は、「ちょっといいですか、いつもと違うけどどうしたの?」

 もしあなたが、身の回りの人が調子悪そうにしていても、決して「大丈夫?」とは声をかけないでください。

 多くの人は、反射的に「大丈夫、大丈夫! 最近、疲れているだけだから」と答えてしまうでしょう。それでは、不安やストレスに悩みメンタルヘルス不調なのかどうか、判断はできません。仮に本当に疲れているだけなのであれば、メンタルヘルス不調と決めてかかるのは失礼になってしまいます。

 あなたが、身の回りの人の調子が悪そうに気がついたときは、「ちょっといいですか。いつもと違うけれど、どうしたの?」と、声をかけてみてください。

 大切なことはあなたが、気づいていることを伝えること、何か助けになることができないかと思っていることを伝えることです。そのためにできることは、まずは、変化に気がついていることを伝え、相手の話を聞いてあげることです。

 ときによっては、「大丈夫です」や、「放っておいてください」と言われてしまうこともあります。そのようなとき、相手はまだ他人に気づかれるなどと考えたこともなく、とっさに隠したい気持ちになっていることもあります。また、何を相談すればいいのかまとめられず、何かを言う準備ができていない可能性があります。

 ですから、そのようなときは、ぜひ、一度引いてください。

 そして、その人を1−2週間また観察し、やはりおかしい、普段のその人ではないと感じたら、再度声を変えてあげてください。「先週も声をかけたことだけど、いつもと違うように感じるけど、どうしたの?」と。