(第3回)テレワークで、管理職は部下のメンタル不調を回避するために何をすべきか【後編】

「在宅勤務時代における部下のトリセツ」【後編】

 2つめのお願いは、あなたの部下は在宅勤務をどう捉えているかと言うことを知って欲しいと言うことです。

 私は昨年1250件の産業医面談を行いましたが、その8割は在宅勤務等のリモートワーカーでした。そしてわかったのは、通勤がなくなり喜ぶ人、家での居場所(在宅勤務場所)がなく肩身が狭い気分になる人、子供と過ごす時間が増えたことを喜ぶ人、そのためにストレスが増えたと嘆く人、在宅勤務の捉え方や、そこに感じるメリットデメリットは十人十色と言うことでした。

 私たちの多くにとってこの1年でWithマスクの生活は当たり前になりました。が、在宅勤務以外でも、出社要請、Go Toや自粛等々の新しい生活を前向きに捉えることができる人も、自分の意にならないことによりストレスを溜めてしまっている人もいました。その背景には、個人個人の性格的特性だけでなく、同居する家族構成、住まいの広さ、職場からの距離、自分や同居人の持病等々様々な要因がありました。そして、それぞれの持つ背景要因はその人にとってはいずれも「正義(真っ当な理由)」であり、他人がどうこう言えるものではありませんでした。

 在宅勤務をネガティブに感じている部下に、「僕もそうだよ」と同情したり、「しょうがないだろ」と正論をかざしても、部下は必ずしもそれに同意するとは限りません。「あなた(上司)よりも私の方が在宅が辛いんです」、「管理職が無能だから上層部に掛け合えないんだろ」など思われてしまっては、お互いの関係性が悪化するだけです。そんな時はぜひ、一言、「このような中、頑張ってくれていて、ありがとう」とまずはねぎらってあげてください。その一言で、気持ちが救われる人はたくさんいます。

 そして、上司ご自身に余裕があれば、「何が辛い?」と聞いてあげてください。その際は、自分は喋らず、相手の言葉をしっかりと聞くことに徹してください。人は話せば9割は楽になるといいます。アドバイスよりも、黙って相手の辛さを理解するよう努めて聞いてあげてください。上司が何もアドバイスしなくても、きくだけで、部下は楽になります。

 3つめのお願いは、部下によって、接する頻度や声かけ頻度を変えましょう、と言うことです。もちろん、業務上のやりとりは、必要に応じてやっていただいて構いません。しかし、職場で顔を見ることができない以上、必ずしも業務に直接関わらない場を設け、部下の顔色や声の加減に意識を向けてみてください。そこから部下の調子を察することはできるはずです。

 在宅勤務での社内コミュニケーションは、従来の電話の他に様々なITアプリが使われています。大きく分ければ、1.顔が見ることができるもの、2.音声のみ、3.テキストチャットのみの3分類でしょう。どの方法が好きかは別にして、やはり1>2>3の順番でコミュニケーション上相手のことをよりわかるのは誰もが気がついていると思います。もし、部下たちとのコミュニケーションを大切にしたいのであれば、上司から顔出しは必要かと思います。

 定期的な部下との1対1での面談で、在宅勤務にどう思っているのか、通勤に当てていた時間はどう過ごしているのか、家族(同居人)や家事で忙しくないか、趣味は続けられているか等々、毎回少し話題を釣ってみてはいかがでしょうか。

 チーム全体での情報交換ミーティングなどでは、部下同士が話す場面をよく見れば、普段上司には見せない一面が見えることもあります。

 私の経験上、一人暮らしの人は、ちょっとした雑談相手や、業務開始時と終了時にチームの人々の声を聞いたり少し話したりすることでほっとすることが多いようでした。一方、家族も在宅で家事が増えてしまっている人は、そのような時間はむしろストレスと感じてしまうようでした。

 部下それぞれが、どの程度のコミュニケーションを望んでいるのか、ぜひ、意識していただけるといいと思います。

 以上、テレワークで部下のメンタル不調を回避するために、上司は何ができるかと言うお話をさせていただきました。1つでもお役に立てば幸いです。