(第1回)在宅勤務はメンタル不調が起きやすいのか?【前編】

「在宅勤務でメンタル不調になりやすい3つの理由と処方箋」【前編】

 こんにちは、産業医の武神と申します。私は主に外資系企業で毎年年間1000人を超える働く人と、心と身体の健康相談をしています。2020年は1250件の産業医面談を行いましたが、その8割は従来のようなリアルな対面ではなく、在宅勤務のため電話やZoom、Teamsなどを用いた遠隔面談でした。
 私たちはこの1年間、新型コロナ感染症の影響を受けてきましたが、コロナ禍のこの状況はまだまだ続きそうです。そこで今回は、どうして在宅勤務はメンタル不調が起きやすいのか?3つの代表的理由を挙げさせていただきたいと思います。

 まず、在宅勤務におけるメンタル不調の要因として、在宅勤務そのもののストレスがあります。空間的なストレス時間的なストレスに分けて説明します。
 在宅勤務には、ずっと同じ空間にいることによるストレスが生じます。息が詰まると表現する人もいるでしょう。出勤や出社という環境の変化がない中で、一日ずっと同じ空間にいるため、オンとオフの区別、メリハリや気分転換がいつものようにできず、ストレスが溜まってしまうのです。
気分転換のための適度な外出、散歩、家庭内でも仕事スペースを設け、リラックスする日常的スペースとは区別することなどで対処できている人は、上手に対応できている印象です。
 また、コロナ禍、そして在宅勤務という非日常的状態がいつまで続くのかという先が見えないことによる時間的ストレスも夏以降散見するようになりました。特に今回初めて在宅勤務を推奨しだした会社では、在宅では業務がうまく回らない、出社した方が効率がいい等々感じる社員は多く、在宅勤務というストレス状態がいつまで続くのか、先が見えず余計に大きなストレスになってしまう傾向がありました。
 一方、全員がずっと在宅勤務をするのではなく、2-3チームに分けて、1-2週間ごとに出社する人たちを決めて在宅勤務者と出社勤務者の混合(split work style)でやっている会社では、同じコロナ禍でも多少の時間的なメリハリがあるため、このようなストレスは比較的少ない印象です。

 在宅勤務におけるメンタル不調の2つめの要因は、人との会話や関わり合いが減ることによる、メンタルヘルスリスクです。
長引く在宅勤務により、会社や同僚たちとの精神的なつながり合いが減ってしまい、ちょっとしたストレスや不安がつもりに積もってしまい、メンタルヘルス不調の原因になってしまう人も少なくありません。
誰にでも、日常生活の中でちょっとしたストレスや不安があります。それが会社で同僚の一言で救われたり、お昼や休み時間でのちょっとした会話で解決や発散できたりすることがあります。日々のストレスや不安を家に持ち帰らないのは、私たちが日頃意識せずして行っている周囲とのコミュニケーション(関わり合い)の結果でもあるのです。
 在宅勤務をしている一人暮らしの人では、場合によって1日誰とも喋らなかったという事態も起こり得ます。S N SやL I N E等のテキストベースの繋がりでも、音声による繋がりでも、ZOOM等の顔の見える繋がりでも、ぜひ意識して人と繋がることを心がけたいですね。必ず、同じ思いの人はいます。