現役産業医が指南するストレス解消法④

『定年後にボケないためにやっておくこととは』

厚生労働省によると、認知症を有する人口は262万人(2015年度)で
65歳以上に占める割合は8.7%。およそ9人に1人が
認知症を発症
していることになる。

認知機能を維持するためには運動、他人との交流
そして好きな趣味を楽しむことが効果的なのだという。

「90歳で死んだ場合、どんな感じですか?誰に囲まれていますか?
まずは、その光景を想像してみましょう。
これは情熱を傾けられるものを見つけるための問いかけです。
不安やストレスに悩まされない人たちは『好きなことをする』習慣を、
もしくは好きな趣味を持っています。
あなたの趣味は何ですか?と聞かれて答えに窮する人は少なくないのでは。
でも、ご安心ください。ここでは、好きなことを見つけるための
具体的なメソッドを紹介したいと思います」

まずは、「一人でできること」×「数人でできること」、
また「外で(晴れた日に)できること」×「室内で(雨の日に)できること」
の4つの枠を作る。
次に「運動系活動」×「文科系活動」の2枠を作り、8マスにする。

「A4用紙などに表を書いて貼っておき、書いたものを眺めながら
自分の人生をかけてやりたいことを意識しましょう。
そして、それに情熱を傾ける。
これを持っているビジネスパーソンは、本当にストレス知らずです」

例として、
一人でできることは日帰り旅行、ランニング、観劇、読書、料理、専門の勉強、短歌など。
数人でできることは散歩、山歩き、スキューバーダイビング、将棋、コーラスなど。

「この表を書いたら次に自分はどういう趣味、どういう居場所が欲しいかを
書き足してみてください。
時間やお金の制限がなかったらという前提で自由に。
例えば『ろくろを回す』、『陰陽五行説を学ぶ』、『ステンドグラス』、
『手の込んだ料理を作る』、『豪華客船で世界一周』など。
いずれは定年で仕事を辞める時を迎えることでしょう。
それまでに是非、好きなこと、やりたいことをすべてのマスに5つずつ
書き込めるくらいまで、意識して趣味を増やしていただければと思います」

会社以外の心の存在場所(=よりどころ)は、言わば自分のホームグランドのようなもの。
職場で心が折れそうになっても、ここに来れば心が落ち着き、エネルギーが回復できる。
そして定年後もやりがいになる、そんな場所を作るのだ。

「地域の少年野球の監督をされている方は、会社でうまくいっていなくても
週末には監督として慕ってくれる子どもたちがいるので、
自分は大切なんだ』と思えるのだと言います。
囲碁クラブに入っている方は『どんなに忙しくても週末には行かなければ』と
会社と違うところに軸を持たれています。
複数の軸を持つことで、一つの軸が倒れても大丈夫なようにしておくことが
心の健康を保つ秘訣と言えるでしょう」

好きな趣味を充実させることは不安対策、ストレス対策、そしてボケることへの対策となるのだ。

次回は「オフを区切ってうまく活用する」

・関連資料

厚労省データ

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

趣味で認知機能を維持する

https://www.ncgg.go.jp/cgss/department/ep/topics/topics_edit16.html