年度が替わり、学校や職場などの生活環境が変わって間もない頃、
目立った病気などがあるわけでもないのに「なんだか調子が良くない」と感じてしまう。
その状況がGWを経ても改善せず、GW以降に体調を崩す人が目立つため、
こうした症状は一般的に「五月病」と呼ばれます。
働く人1万人以上と産業医面談をしてきて感じるのは、五月病の原因は主に3つあります。
新しい生活環境変化への適応疲れ、気心知れた人たちからの隔離、そして新年度での高すぎる期待です。
そこで今回は、緊急事態宣言下での五月病対策として、
心も体も元気で過ごせるよう、3つの原因に対して処方箋を処方させていただきます。
■緊急事態宣言下の生活変化で疲労が蓄積
新型コロナ感染症のため、2020年は学校休校や在宅勤務と、前例のない新年度として始まりました。
そして、待ちに待ったゴールデンウィーク(GW)も、最長12連休が政府から推奨されるものの
「ステイホーム~ゴールデンウィークはうちで、すごそう~」と異例のものとなりました。
GWが明けた日本は、(新型コロナ感染症が)どのような状況になっているのかわかりません。
しかし、2ヶ月以上続く例年にない生活環境の変化で、多くの人は疲労が溜まっていて当然です。
疲れていると人はストレスに対し脆くなります。
新しい生活環境に対して、“がんばっていた”人の気持ちが、疲労の蓄積とともに“がんばっているのに”に変わると、
張り詰めていた気持ちの糸が切れ、ダウンしてしまうのです。
こうならないためには、“やりすぎない”ことが大切です。
仕事も8割でよしとする、3食しっかり作るのではなく1回はお茶漬けやお弁当でよしとする等、
がんばりすぎない、疲労を溜めすぎないよう、やりすぎないことを心がけましょう。
また、疲労への対処の基本は、よく食べ、よく眠り、規則正しい生活を心がけることです。
適度な運動習慣は、このきっかけとなることを付け加えさせていただきます。
■ストレスを解消するはずの人間関係からの隔離
不安や悩みやストレスがあるとき、人は、医師やカウンセラーではなく、
友人や家族に話すことで、9割の人が「ラクになった」と思えます。
仕事帰りに友人と軽くお茶をする、1日の終わりにちょっとでも人と話す、
そんなことで、人は不安やストレスや悩みを溜め込まずに、軽いうちに解消できるのです。
不安やストレスは、溜まるほど解消が難しくなり、知らず知らずのうちに5月病の原因、
すなわちメンタルヘルス不調の原因になってしまいます。
職場での何気のない同僚との会話や、オフ時間の気を許せる友人たちとの食事など、
普段は普通にあったことが、新型コロナウイルス感染症対策のためになくなってしまった今年は、
多くの人が気心許せる人たちとの交流不足になっています。
ぜひこのことを認識し、LINEやZoom等々オンラインでもいいので、普段以上のコミュニケーションを意識してください。
5月病の原因となるもう一つの原因は、自分及び相手に対する“高すぎる”期待です。
■高過ぎる期待はストレスに
新年度が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。
お稽古事や自己研鑽は、思った通りにうまくいけばいいのですが、上手くいかない場合もあります。
そのときに、すぐに諦められる人はいいのですが、自分は頑張りが足りないから
もっと頑張らなければいけないと考え自分をもっと追い詰めてしまう人もいます。
言うまでもなく、自分に高い期待値をもつことは大切です。
しかし、ときには柔軟に考えることも大切です。
特に今年のように、異例尽くめの状況では、
この異例な状況に適応するだけで精一杯、たてた目標や計画にそって行動ができていない人も多いはずです。
自分の心や体における不調の兆しに気付いた場合、原因に高すぎる期待値がある可能性もあります。
そのようなときは、今年はしょうがないとぜひ、ゴール設定を下げる勇気をもってください。
■それでも「五月病かも?」と思ったときは?
GW明けのゆううつだ、おっくうだ…という気分。
そのような気持ちは今年はとても普通のことと思います。多くの人が感じていますから、心配は不要です。
しかし、その気持ちが1-2週間たっても続くとき、なおかつ、なんらかの体調不良を感じているのであれば、
それは一度立ち止まってみるときかもしれません。
しかし、いきなりお医者さんに行く必要はありません。
まずは、自分の身近な人に、「最近、僕(私)調子が悪いんだけど…」などと相談しましょう。
今は五月病とは無縁と思っている人も、もし自分の調子が悪くなった時に相談する相手について日頃から考えておきましょう。
「仕事関係ならこの人」「プライベートならこの人」などと決めておくと、いざという時に迷わないで済みます。