「体験活動」が大切

みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。

大学生に、子どもの頃、外遊びでどんなことをしていたか訊ねたところ、
「学校の昼休みに、校庭で、ドロケイ(鬼ごっこ)」が出てきました。
呼び名は変わっても、いつの時代の子どもも同じことをしています。
昭和世代の子どもと異なっているのは、「学校が終わってから、道端や広場での外遊び」ではないところでしょうか。

ほかに、「サッカーや野球」との発言があったので、どこで遊んでいるのか聞いてみると、いずれも「スポーツクラブで」でした。
親が用意した「通う場所」であるスポーツクラブに入っていないと、「体を動かす」ことがほぼなかったようです。
他に何をして遊んでいたか聞くと、「家の中でゲーム」でした。
外に行かなくても、家のなかで一人ででもできる遊びがあるのなら、夢中になるのも当然でしょう。

国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)』の報告書が発表されています。(平成31年2月発表) https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/130/

 報告書の表紙には、「体験の風をおこそう」のロゴマークが載っていました。
平成22年度からはじまっている運動です。子どもたちに「体験」の機会をつくろうとするものです。
小学校の校庭は開放されなくなりました。ボール遊びができる広い公園も減り、外遊びできる環境がなくなっています。
子どもたちも塾や習い事、スポーツクラブなどで忙しく、純粋に「遊ぶ」時間がありません。
外で遊んで、大きな声で「〇〇ちゃ~ん」と呼ぶこともありません。
異年齢の人たちと遊んで、お兄ちゃんお姉ちゃんがどんなことを
言ったりしたりするのか見ることもなければ、小さな子を世話することもないでしょう。
ケンカをしたことがなければ、どうすれば仲直りできるか考え試みる体験もありません。
遊びには人間関係を学ぶ機会が含まれていますが、
その体験がなければ、人とのかかわり方にとまどったり自信がもてなかったりするのでしょう

 そのまま年齢を重ね、「年長者である大人と会話をしたのは、就職活動のときが初めて」
という大学生も少なくありません。
家族親戚以外は、同級生とだけかかわる社会で過ごして育てば、仕方のないことです。

 報告書を見ましょう。
「ふだんの生活の実態」では、「家の人に叱られたり、注意されたりすること」が、「よくある+時々ある」で、81.8%です。
これは、「家の人にほめられること:76.8%」や、「家の人に悩みや相談を聞いてもらうこと:48%」よりも高い割合です。(P.45)
 自分自身をふりかえってもそうですが、親は、子どもをほめたり、子どもの悩み相談にのったりするよりも、「叱る、注意する」が多いようです。

「青少年の自律的行動習慣に関する指標と意識や生活行動の関係」のページがあります。
「自律的行動習慣」と、「早寝早起き朝ご飯」、「自己肯定感」、「携帯電話・スマートフォンの利用時間」、
「心身の疲労感」の関係を調べています。

「自立的行動習慣の3つの指標」として、「自律性」、「積極性」、「協調性」を示しています。つぎの質問項目できいています。

「自律性: ・人の話をきちんと聞く ・ルールを守って行動する ・周りの人に迷惑をかけずに行動する ・自分でできることは自分でする」
「積極性: ・困ったときでも前向きに取り組む ・自分の思ったことをはっきりと言う ・人から言われなくても、自分からすすんでやる ・先のことを考えて、自分の計画を立てる」
「協調性: ・困っている人がいたときに手助けする ・友達が悪いことをしていたら、やめさせる ・相手の立場になって考える ・誰とでも協力してグループ活動する」

調査結果を見ると、「早寝早起きで、朝ご飯を毎日食べている」子どもは、「自律性、積極性、協調性」が身についている傾向が高いそうです。(対象:小5、中2、高2)

また、「自然体験が豊富な子ども」ほど、そして「お手伝いをよくする子ども」ほど、「自律性、積極性、協調性」が身についているとあります。(対象:小4~小6、中2、高2)

そして、こうした「自律性、積極性、協調性」が身についている子どもほど、「自己肯定感が高い」「携帯電話・スマートフォンの利用時間が短い」「心身の疲労を感じることが少ない」のだそうです。(対象:小4~小6、中2、高2)

「自己肯定感」は、次の6つの質問で調査しています。「学校の友達が多い方だ」、「自分には、自分らしさがある」、「学校以外の友だちが多い方だ」、「今の自分が好きだ」、「体力には自信がある」、「勉強は得意な方だ」

「自分には、自分らしさがある」を見ると、「とてもそう思う+少し思う」で、
「小4:76.3%」、「小5:75.3%」、「小6:74.9%」。中2から大きく下がり、「中2:65%」、「高2:64.6%」となっています。

同様に、「今の自分が好きだ」も中2から下がっています。「とてもそう思う+少し思う」で、「小4:62%」、「小5:55.9%」、「小6:54.4%」、「中2:38.2%」、「高2:38%」です。

報告書の総括には、「『今の自分が好きだ』が中学生、高校生になると4割を下回っている。
思春期になると自己肯定感が低くなる傾向があるといわれる。
その後、大人になり年を重ねるにつれて自己肯定感が回復していくと考えられているが、
10代の自殺や引きこもりなどの割合が高止まりしている現状を踏まえれば、見過ごすことのできない傾向である」と記されています。(P.98)

時代が変わり昔とは環境が変わったこともあり、
「子どもたちの体験」は、あえてその機会をつくるしかありません。
それには、大人のかかわりが重要です。
おとなが積極的に子どもたちに機会を提供できるように行動する必要があります。

日本ストレスチェック協会の講座「子どものストレス対策(大人向け)~ストレスに強い大人になるために、子ども時代に身につけたいこと~」でも、
「体験活動、自己肯定感」についてご紹介しています。

子どもたちの将来のために、大人の私たちがともに学び、行動していきましょう。

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奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント 
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/
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