産業医が明かす ストレスに強い人はどんな子供時代を送ってきたか②

現在の日本では、子供(学生)時代は、「勉強」ができることを求められます。
しかし、大人(社会人)になると、「仕事」ができることを求められるようになります。
この時に大きな変化がいくつかありますが、その3つを挙げます。

1つめは、子供(学生)時代は、勉強=「自分の問題」を解決することが求められていましたが、
大人(社会人)になり、仕事が始まると、
「相手の課題」を解決(の手伝い)することが求められます。

例えば、仕事とは、他人に“ありがとう”をいただくことだとよく言われますね。

2つめは、子供(学生)時代は、気の合う仲のいい「友達」とつるんで過ごしていればよかったのに対し、
大人(社会人)になると、職場では、気の合わない、仲良くしずらい人とも一緒に過ごさないといけません。
よくある職場のストレス調査的なアンケートでは、職場のストレス原因として、
「職場の人間関係」は必ず、1位か2位どちらかに常にあります。
社会人は気の合わない人ともたとえそれが、上司でも同僚でも、一緒に業務をこなさないとならないのです。

3つめは、子供(学生)時代は、「テストの点数」で評価をされることが多かったですが、
大人(社会人)になり、仕事が始まると、営業成績等の実績が上がる前は、「行動」で評価されるようになります。
例えば、何件のクライエントにアポの電話を入れたか、朝何時にきて、夜は何時までいたか、等々、
結果が出ないうちは、結果に至るであろうプロセス・行動が評価基準となります。
知識の量や机の上で理論立てて頭で考えただけでは太刀打ちできないことなのです。

子供から大人になり、自分に求められるものが勉強から仕事に変わった際に、
従来の「テストの点数が高い=頭がいい」だけの人間は上記のような変化に適応できないことが多いです。
それよりも、新しい仕事に対する好奇心や熱意、目的のためには他人と協調できる姿勢、
試行錯誤する気力、転んでも起き上がる回復力等々の非認知能力がある人は、勉強から仕事への変化に適応していると感じます。

私は産業医として、外資系企業やいわゆるエリート企業の若者たちにおいて、
ガリ勉で一流大学を卒業しても、社会に出ると心が折れてしまう人は、
認知能力のために非認知能力を犠牲にしてきたケースが多くあることを見てきました。
有名外資系企業に入社する人は、それまで大きな失敗を経験していないことがほとんどです。
幼少時からの受験戦争に勝ち残り、同学年の優秀な友人たちと暗黙の中で比べられ、
“就職”という競争にも勝って入社してきた彼彼女たちには、いわば挫折の経験がありません。

しかし、とても優秀で、挫折で傷ついた経験がないのが、時に裏目に出ることもあります。
入社すると、同僚も優秀な人ばかりです。また、職場ではたくさんの先輩の社員達がいます。
皆、自分よりも仕事を知っています。もう、自分が一番、という環境ではないのです。
そのような中、自分が劣っていることにショックを受ける者、その事実を認めたくない/受け入れられない者、
そのような場には足が向かなくなる者、様々います。
このような反応は、落ち込み(抑うつ)、逆ギレ、引きこもり(遅刻の常習や出社拒否)という形で現れます。

一方、非認知能力の高い人は、自分の知らなかった新しい世界の人々と交わり協議協調し、
試行錯誤を繰り返し、転んでも立ち上がることができますので、彼彼女らは、タフでハードな環境でもサバイバルできるのです。
その姿勢こそが、ストレスに強いと言われる所以なのです。

もちろん、仕事へのミスマッチからくるストレス原因は、どちらの能力不足でも起こりえるもので、
単にその仕事に対する十分な認知能力(基本的能力)が欠ける場合もあります。
ですので、私は、認知能力がいらないとは考えてはおりません。
ただ、ストレスに強くなるためには、認知能力を上回る非認知能力が必要なのです。

※この続きは7月24日(水)に公開予定です。どうぞお楽しみに!

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