みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。
大学生の就職活動をみていて、気になるときが少なくありません。
「自分で決める」のか、「親の言いなりになる」のかでは、
当然のことながら今後の人生が違ってきます。
内定をもらった企業について悩んでいた学生(4年生)は、
考え抜いた結果、内定辞退を決断しました。
もういちど就職活動をすると宣言し、始めたのは8月です。
「自分で考えて、自分で決断」した人は、「自分で行動」します。
内定辞退も丁重に礼を尽くして自分で説明に行きました。
その後の就職活動も精力的に行動し、10月には、
やりたい仕事の企業から内定をもらえたと喜んでいました。
内定者研修に参加した際には、アルバイトをしたいと申し出て会社に受け入れてもらい、仕事に行っています。
一方、親から「そんな会社、聞いたがことない。内定は断っちゃいなさい」と言われ、
反抗する理由も、親を説得する力も持ち合わせない学生は、そのとおりにしていまいます。
8月、やっと手にしたたった1社の内定を、「親の言うとおりに」辞退した学生が、
その後の就職活動がうまくいくはずがありません。
自分のことを自分で考えて決めてきた経験がなく、
親の言うことをよく聞く「親にとっての良い子」です。
こうして過ごしてきた人は、自分のことが分かりません。
就職課にやってくるのは、
親から「聞いて来なさい」と言われてきた「質問項目」について答えをもらうためです。
就職活動の主体であるはずの学生本人は、伝言係です。
自分で自分のことを考えていないのですから、
伝えるべき「自己PRや志望動機」に、何を書いたり言ったりしたらいいのか分からないのは当然です。
「息子のSPIをやってやったんだけど、面接で落ちたよ」と言っていたのは、大手企業に勤める男性です。
SPIとは、企業が採用活動で、応募者に対して行う適性検査です。
WEB入力で行うことができるので、親が代わりに入力することは可能ですが、それでいいのでしょうか。
就職試験は何段階もあり、学校の試験のように「100点を取れば優秀、合格」とはなりません。
子どもは働いて自立し、自分の人生を歩き、キャリア形成していきます。
そのための就職活動のはずですが、「自分で自分のことをする」を、
親から「やらないように」と、抑えられているように思えてなりません。
スマホで呼べるベビーシッターを運営する株式会社キッズラインが、
会員を対象に行った調査(2017)によると、「子供の夏休みの宿題をサポートしますか」という質問に対し、
「全面的に手伝う:54.1%」「頼まれれば手伝う:45.9%」です。手伝わない親はいないようです。
また、アクトインディ株式会社が運営する子どもとのお出かけ情報サイト『いこーよ』の調査(2016)においても、
「子供の夏休みの宿題を手伝ったことがありますか」の問いに、
「ほとんど手伝う:6%」「手伝うものもある:77%」で、
両者を合算すると「83%の親が子供の宿題を手伝った経験がある」という結果になったとありました。
どこまでが「手伝い・サポート」なのでしょうか。
「体調が悪いので今日は休ませます」と電話してくる新入社員の親、
授業課題を代わりにやって送ってくる大学生の親。
人事に、応募に関する質問をしてくる就職活動中の大学生の親。
ハローワークに子どもを連れてくる親。
子どもが「親に一緒に来てもらった」ではなく、親が子どもを連れてくるのです。
窓口担当者の質問に答えるのは、子どもではなく親です。
こうした事例は珍しいことではありません。
この種の親の行動は、「手伝い・サポート」の域を超えていると私は思うのですが、
親は「子どものために」と、せっせと「手伝って」いるのでしょう。
おそらく、子どもが小さいときから、何でも肩代わりしてやってきたのです。
子どもはすでに大人になっていますが、続けているだけのことです。
私には「何もできない子」に育てているような気がしてなりません。
日本ストレスチェック協会では、今年から新しい講座が開催されます。
「大人のための『子供のストレス対策』講座~ストレスに強い大人になるために、子供時代に身に着けたいこと~」
(講師:武神健之・産業医・日本ストレスチェック協会代表理事)です。
親は何を「手伝う」ことができるのか。
大人は、子供たちの成長にどのようなサポートができるのか、
皆様と一緒に考えてみたいと思います。
奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント
健康経営アドバイザー
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/