凸凹を見つけて、凸を伸ばす。

小太り産業医:「久しぶりの登場で、ちょっと恥ずかしいなぁ・・・」
人事担当者:「結局、なんだかんだ言って、筆無精は治りませんね。」
小太り産業医:「しゃべるのは得意なんだけど、書く方はねぇ」
人事担当者:「誰にでも得意、不得意はありますよ。」
小太り産業医:「君の得意、不得意は?」
人事担当者:「不得意は”仕事”全般、得意は投資ですかね。最近、仮想通貨でかなり儲けましたよ!」
小太り産業医:「君さ、仕事辞めて、そっちに行ったら?」

 

最近、私はメンタルヘルス不調者の復職面談の際に、必ず聞いていることがあります。
質問1:今までの仕事の中で、この仕事は好き、この仕事なら誰にも負けない、任せて欲しい仕事は?
質問2:今までの仕事で中で、苦手な仕事、嫌いな仕事は?
質問3:今までの仕事の中で、ちょっと手助けしてくれたら大丈夫な仕事は?

ケーススタディで具体的にお伝えしますね。

 

ケース1
ガス器具メーカー勤務。37歳男性。
実験室から設計部に移動となり、半年後のうつ病を発症し休職となる。
復職面談の際に、上記の質問を行ったところ、その答えです。
質問1:一人で黙々と集中して仕事をすること、いろんなデータを集めて、整理すること
質問2:いろんな人とやりとりをしたり、いくつかの案件を同時進行で行うこと
質問3:整理したデータを、プレゼン用に変えること

この答えを見る限り、一人で黙々と実験を行い、データを集める仕事は彼にとっては天職だったのかもしれません。しかし、その優秀さから期待されて、設計部に異動しました。設計とはいろんな人達と調整しながら仕事を進めていく部署です。彼にとっては辛かったのでしょう。
復職は原則、元職場なのですが、私は彼を実験室での復職としました。
復職後に半年間面談にてフォローしていましたが、現在は受診および内服も無く、経過良好です。

 

ケース2
総合印刷企業勤務。44歳男性。
今までWebデザインのみを行っていたが、会社の方針により客先にWebデザインを提案する営業的な仕事が増え、調子を崩して休職となりました。
復職面談の際に、上記の質問を行ったところ、その答えです。
質問1:PCに向かって、仕事をしていると時間を忘れる。資料作り、デザイン設計など
質問2:人前でのプレゼン、突発的な業務が多い仕事、口頭指示の多い業務(頭に残らない)
質問3:予定表を見せてくれたり、メモや文章で指示されれば、安心して仕事ができる

この方も、一人で没頭できる仕事が好きなようです。しかし、会社方針により仕事を受けるだけではなくて、自ら仕事を取りに行くように言われ、慣れない営業を行った結果、体調を崩してしまいました。
彼については、元職場での復職となりました。ただ、その際に職場には、彼に用件を伝える際は文書で伝えることを徹底するように指示しました。突発的な業務を防止するのはなかなか困難なので、そこまでは要求しませんでした。
ただ、客先でのプレゼン業務からは外してもらいました。その代わり、彼にはみんなが使用するプレゼン資料を作ってもらうことによって、バランスをとってもらいました。やはり、持ちつ持たれつの関係じゃ無いと続きませんからね。

 

この二つのケースを見て、何か感じませんか?
二人とも発達障害的要素をお持ちなのです。
ケース1の方は
・一人作業が好き
・コミュニケーション、マルチタスクが苦手

ケース2の方は
・過集中になりがち
・プレゼンが苦手、予定外の仕事が嫌い、口頭指示が残らない

 

最近、小太り産業医が思うことがあります。
”実は、多くのメンタルヘルス不調者の裏には発達障害が隠れているのでは?”
極論かもしれませんが、面談を通して浮かび上がる背景と原因を考えると、メンタルヘルス不調者の”生きにくさ”は、実は周囲との価値観や行動の乖離が原因があり、その背景には発達障害があるのでは?と。
そこまで言い切れないにしても、素因はあると感じています。

以前から、精神科医の中では、「難治性のメンタルヘルス不調者の背景に発達障害が隠れている」と指摘されていましたが、難治性にかかわらず、メンタルヘルス不調者に陥る背景を作り出しているのでは無いのでしょうか。

話しがタイトルから外れました。

チームで業務に対応する会社は多いと思います。一律の評価では無く、メンバーの凸凹を理解して上手く組み合わせることができれば、管理職として優れた評価を得られるのではないのでしょうか。
そのためには、メンバーと一対一のコミュニケーションが非常に重要だと思います。

 

人事担当者:「あ、業務の中でも一つだけ得意なことを思い出しましたよ。」
小太り産業医:「え!君にそんなのあるの?」
人事担当者:「話しの長い先生の相手ですよ。適当に相づちを打ってれば、満足でしょ。先生。」
小太り産業:「・・・。」

よろしくお願いいたします。

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文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
代表取締役 所長
認定産業医/労働衛生コンサルタント
認定内科医/循環器内科専門医
日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
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