小さなラッキーが大きなハッピーに

 みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。
 大学でキャリアデザインの授業を担当しています。

 キャリアとは、人生全部のこと。学生には、「キャリアデザインの授業は『生きる力』をつけるためにある」と伝えています。限りある大学4年間を存分に楽しみ、充実させていってほしいと願っています。

 卒業後の職業人生は長いです。歓迎すべき楽しいことばかりではありません。思いがけないアクシデントに頭を悩ませることもあるでしょう。何が起きても、自分の人生。自分で引き受けて、自分らしく自律して生きていく。そんな卒業後を想像して、「大学時代に基礎体力をつけておこう」と、グループワークで進行する授業をつくっています。

 授業は、毎回テーマを設けて自己紹介から始めます。ある日、「最近あったラッキーだったこと、あるいはうれしかったこと、または楽しかったことを紹介してください」と指示をだしました。すると、学生たちから「えぇ~っ!」と、どんよりとした否定的な声が出てきました。

 「せんせ~い。そんなもの、ないっす」「ない、な~い!」と騒ぎます。「ラッキー、うれしい、楽しい」が「ない」と断言する学生たちに、一瞬驚きました。しかし、彼らは気づいていないだけなのです。あるいは、「発表すること」に若干の恥ずかしさを感じているだけなのです。

 埼玉から東京へ電車通勤するとき、混雑した車内から乗客の頭と頭の間からのぞく窓越し遠くに富士山が見えると、「今日はラッキー! 今日は一日いい日だ!」と思い、何となくうれしい気持ちで会社に向かったものでした。「富士山の威力」は強く、今でも富士山が見えるとラッキーと感じ、思わず顔がほころびます。

 学生たちに、「今朝電車が止まっていたでしょ。再開の見通し立たずの状態だったので、授業に間に合わないかもしれないと焦ったんですよ。それならバスにしようと、大急ぎでバス停に向かうと、ちょうどバスが来ました。ラッキーでした。おまけに、座れたんです。益々ラッキー! 無事大学に着きましたよ。今朝はホントにラッキーでした。」と、その日の朝の出来事を伝えました。

 すると、学生たちは「そんなことでいいんですかぁ?」とホッとした様子で反応しました。このあとの自己紹介は、たいそう楽しそうでした。

 ラッキーもうれしいも楽しいも、「正解らしきもの」があって、それに見合う答え方をしなければいけないと勘違いしています。自分の気持ちは素直に表現すればいいのです。自分の周辺にある小さなラッキーを大切にしましょう。こんなにも電車遅延がおきる毎日に、乗った電車が定刻通りに動いているだけでもラッキーかもしれません。ふと空を見上げたら雲ひとつない青空に気づき、ラッキーかもしれません。電車の中の赤ちゃんにニコッと微笑まれてラッキーかもしれません。

 小さなラッキーの種は身近にたくさんあります。それを感じ取り、家族や友人、職場の仲間とちょっとだけ話してシェアしてください。小さなラッキーの交換はうれしい気持ちの交換になり、多くの人とシェアしたら、大きなハッピーが広がります。

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奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント 
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/
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