セルフケアのための感情の区切り方”旅行”

人事担当者:「先生、今年の9月はシルバーウィークがありますよ!」
小太り産業医:「人事担当者さんはどこかに行くの?」
人事担当者:「私は彼女と京都に行ってきます。」
小太り産業医:「(彼女いるんだぁ~)日本人は京都が好きだねぇ。古い町並みが癒やしてくれるんだよ。」
人事担当者:「会社から離れ、彼女とゆっくり京都で過ごしてリフレッシュしてきます。で、先生は?」
小太り産業医:「断食合宿でもいこうかな。」

ストレスチェック制度は各々の労働者個人のセルフケアを啓発するためのツールです。メンタルヘルスに落ち込まない、簡単な技術として”感情を区切る”ことが挙げられます。感情を区切る、つまりよく言われるon-offをつけることです。
その区切る作業の具体例として挙げられるのが”旅行”です。では、どんな効果があるのでしょう?

①古い町並み効果
日本人の多くは京都が好きだと私は勝手に解釈していますが、正解ですか?(笑)
京都の他にも全国各地に小京都と呼ばれる町があり、その街並みが人気を博し多くの観光客が訪れています。では、なぜ人気なのでしょう?
福島県立医科大学疫学講座の大平哲也先生の研究によると、古い街並みを散策すると、ストレス値が30%軽減するという報告があります。都会のど真ん中と古い街並みで30分間、自律神経の変調からストレス測定を行ったところ、古い街並みの方がストレス値が低かったのです。
古い街並みには、日本人のどこかにある原風景を思い出させ、懐かしい気持ちが癒やしに繋がるのかも知れません。

②ストレスが軽いうちに旅行に行くべし
旅行がストレス解消に効果を発揮するかどうかを調べた論文があります。(社)日本旅行業協会(JATA)が2001年に行った、2泊3日のモニター旅行時の生理反応(血液、採尿、唾液、脳波)及び心理状態(質問紙)をもとにした「癒し」効果の解析をしました。
結果は・・・、
・ストレス負荷が少ない人で低減効果が大きく表れ、多い人にはそれほど効果が表れなかった
・旅行中に得られる気分の高揚や充実感については、ストレス負荷が少ない人ほど良い傾向が表れた
ストレス負荷があまりにも多いと、旅行の効果はあまり得られ無いようです。ただ、この実験は2泊3日で行っており、もっと長い旅行を計画できれば、ストレス負荷が多い人でも癒やしの効果を得られるのかもしれません。
ですから、ストレスが溜まりすぎてから旅行に行くのではなくて、ほどほど溜まって旅行に行って解消するというサイクルを持つことが出来たら、ストレス知らずになれるかもしれません。

③一人ではなく、友人と
「誰かと一緒に何かを体験をするとその体験はより強いものになる」というのは以前から心理学の世界でも指摘されていることです。
また、脳活動パターンをMRIで描出する研究では、一人で写っている写真を見せるよりも、友達と一緒に写っている写真を見せた方が、より感情的な反応を得られている事が判明しました。そして、その写真を見せた直後に、「この感情を誰かと共有したい」という願望が表れてきたそうです。
そんな感情が今の時代、FacebookやInstagramに代表されるSNSへの投稿に繋がっているかもしれません。
もちろん、誰かと一緒に異国に行った場合、ケンカして帰ってくることもあるかもしれませんが、それも共有できる思い出の一つになります。1人で旅をすると、きれいな景色を見たとき、美味しいモノを食べたとき、その感動を共有しあうことができません。私たちはほかの人と経験を共有することで、思い出はもっともっと素晴らしいものになるのです。
会社以外に思い出が共有できる”仲間”が居ることはとても大事なことです。

感情を区切るについては、日本ストレスチェック協会での体験講座、入門講座を受講して頂けると、その具体的な区切り方が分かります。是非、受講してみてください。

【不安とストレスで悩まない技術を身につける入門講座】
http://jsca.co.jp/semi_syubetu/nyumon
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文責:新井 孝典
一般社団法人ストレスチェック協会 理事
日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタント
株式会社なごや産業医事務所代表取締役
https://www.facebook.com/dr.occupational.physician
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