「ほめる」と「しかる」

みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。

高等学校を訪問することがあります。
キャリア教育の授業や面談をするためです。

文化祭を間近に控えていた頃のある公立高校では、何かの話し合いを
していたり、ダンスの練習をしていたり、明るくにぎやかで、
元気そうな様子をよく見ました。

校庭や廊下ですれちがう生徒たちは「(こんに)ちはっ!」と
元気に挨拶をしてくれます。
制服がないこともありカラフルな印象がありました。
のびのびと「やらせる」方針で生徒を育成しているのでしょう。

この学校では、個別面談後の机や椅子の消毒を、
生徒各自が行うように指導されていました。
消毒液とふき取りペーパー、ゴミ箱が用意されているので、
誰でもすぐにできます。

面倒かもしれませんが、「みんなの安全のために必要なこと」
と理解し行動しています。
行動しやすい用意があれば迷うことなく行動できます。
ドアも窓も全開にしていますので、教室内は廊下から見えます。

通りかかって中の様子を見た先生は、
「〇〇さん、やってくれたのね。ありがとう」と声をかけています。

先生は生徒にプラスのストローク(働きかけ)を打っています。
生徒の行動をほめて、その行動の定着・習慣化を促進しています。
生徒は先生から心地よいストロークをもらい、
「先生が自分を見てくれている」ことを実感します。
人との信頼関係づくりは、こうした小さなかかわりの積み重ねのように思います。

体育館で講座を開いた高等学校では、「外部講師を迎えるのだから
きちんとしなければならない」との方針なのでしょう。
先生が発する「外部から先生に来ていただいたのだから。
ちゃんとできないと恥ずかしい」の言葉が何度もマイクで流れていました。
クラスごとに整列した後は先生方による服装チェックです。
上着を着てボタンを閉める。ネクタイやリボンをきちんとつける。
ベルト部分を折り曲げてスカート丈を短くしていたら直させる。
これらを一人ずつ確認していました。
上述の高等学校と比較すると明るさはありません。適度な緊張感もなく、
むしろだるい感じが出ていました。
服装点検で先生に注意されることには慣れ切っていて、
「どうでもいいや」になっている気がします。

講座終了後、数名の女子生徒が呼び出されていました。
どうやらスカート丈に問題があったようです。
私たちが講座の後片づけをし、体育館の出口へ歩いているなか、
女子生徒は一人ずつ、10名くらいの先生にぐるっと囲まれて、
再び服装チェックと指導(?)がなされていました。

私は怖いと思いました。
不登校の芽はこうしたところから出ているのではないかとも思いました。
スカート丈の重要性、意味、直すべき理由が生徒に分かるように説明がなされ、
生徒が納得することを望みます。

「しかる」が機能するのは、「ほめる」の蓄積があり信頼関係があるからのことです。
先生と生徒の関係にも信頼が必要であると、私は思います。
「ほめる」にも技術が必要です。

まずは、「ほめるんだ」と意識します。
そのうえでどうしていいか分からないときは、服装、
持ち物などを見つけて、声をかけてみましょう。
「その傘、かわいいね」など、「環境(外側にあるもの)をほめる」やり方です。
「先生が自分を見てくれている。自分のことを忘れてはいない」が
伝わることが大切です。
机椅子の消毒をしているところを見て声掛けした先生は、
「行動をほめる」を実践しました。

「何をほめるのか」の視点は、「環境」のつぎに「行動」です。
そのつぎが「能力」「考え方」で、一番上は「存在」です。
日本ストレスチェック協会では「ほめどころピラミッド」の図で整理し、
みなさまにお伝えしています。

「しかる」にも技術があります。
体育館で周囲に人がいるところで、生徒一人に複数の先生は、
効果があるのか疑問がわきます。
しかり方のポイントは、「守ってほしい『しかり癖』」でまとめています。

組織や教室の雰囲気が重々しいな、暗いなと感じたら、
自分自身のコミュニケーションのあり方をふりかえってみましょう。
親も教員も上司も、人を育てるのに「ほめる」と「しかる」どちらも
重要であることは分かっています。
分かっていますが、難しいです。
難しくても、子ども、生徒、部下の育成にかかわる大人は、
意識的にしていく必要があります。
上手に「ほめたり、しかったり」できるようになりたいと思います。

日本ストレスチェック協会が提供するメンタルヘルス対策入門講座は、
「組織をケア」するための「みる・きく・はなす技術」
を分かりやすく紹介しています。組織には、職場だけでなく、
家庭、教室も含めて考えてみましょう。

11月28日(土)~29日(日)には、
「メンタルヘルスヘルスファシリテーター養成講座」も予定されています。
周囲の人々をケアしたい。
ケアできる人を増やしたい。
大切な人たちの心の健康維持に上手なサポートをしたいなど、
「人の成長」にかかわる立場のみなさま、ご一緒に学びましょう。

奥 富美子(おく ふみこ)

国家資格キャリアコンサルタント 
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/