大人の発達障害

産業医:「人事担当者君、この記事よんだ?」
人事担当者:「あ~、”東大生の4人に1人は「アスペルガー症候群」 元東大院生のツイートに現役も「マジだと思う」”ですね。(http://www.j-cast.com/2016/02/04257610.html?p=all)」
産業医:「ボクはいろんな会社で産業医をしてるけど、あたっていると思う。これは、東大生に限らず、医者や弁護士など高学歴・社会的高位置職業の人に多いよ。」
人事担当者:「ちなみに、ボクは”一応”東大卒ですが、周りにもコミュ障(コミュニケーション障害)や勉強できるけど身の回りが全然ダメとか居ましたね。」
産業医:「(おまえ、東大卒なの・・・)。学生時代は良かったかもしれないけど、社交性や協調性を高く求められる社会人になるといろいろ大変なことになるよね。」
人事担当者:「そういえば、昨日行った焼き肉屋、チョ~美味しかったですよ。今度行きましょうよ!先生の奢りで!」
産業医:「そういう、前後の会話の流れを無視して、自分の言いたいことを言いたくなるのは、発達障害の特徴だよ!!」
人事担当者:「で、いつ行きます?」
産業医:「・・・・。」

前述のニュース記事をご覧になった方も多いと思います。
でも、皆さんの周囲にも高学歴で社会的地位の高い人で”変人”の部類に入れられている人はいませんか?
医者に多いですけどね。(笑)

さて、今は”アスペルガー”という言葉は使いません。アスペルガーは”自閉症スペクトラム”の一部なのです。
私は精神科医でもないし、ましてや発達障害の専門家でもありません。ただ、産業医をしているとこの自閉症スペクトラムを含む”大人の発達障害”によく遭遇します。
そこで、私が経験した大人の発達障害について述べることで、困っている人事担当者の一助になれば良いと思います。

発達障害の分類

発達障害は大きく3つに分類されます。
①ASD:自閉症スペクトラム(知能が高いもしくは保たれている場合がアスペルガー症候群と呼ばれます)
その場の状況、相手の気持ち、次に起こることなどを想像することが苦手です。
思い込みがあり認知・理解のズレが発生しやすく、マルチタスクは苦手です。

②ADHD(注意欠如多動性障害)
注意関心の頭の切り替えが難しく、思い付きで行動しやすい、うっかりミスが多い。予定外のことが起きるとパニックになってしまいます。
今は内服によって、すこし落ち着かせる事が出来ます。

③LD(学習障害)
作業指示の飲み込みの速度が遅い、特定の作業が何度やっても理解できない。

精神科領域なので、数値を示してASD、ADHDなどを明確に区別することは出来ませんし、二つの特徴を持っている方もいます。
これからの内容は区別をハッキリさせず、”大人の発達障害”として話していこうと思います。

発達障害かも・・・と思う時

発達障害について高名な信州大学の本田秀夫先生は著書の「自閉症スペクトラム」のなかで、自閉症スペクトラムの特徴を簡潔明瞭に述べています。
「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと」
私も正にその通り!と思います。
大人の発達障害として、さらに付け加えることとしては「相手の気持ちを察すること、聴覚による情報を留めておく事が苦手」です。
この、相手の気持ちを察することなく、自分の関心事を最優先してしまう行動に出てしまい、周囲が困ってしまうのです。

そして、この事が”発達障害”が原因なのか、それとも”性格に難あり”なのかがわからない点も困ってしまいます。
例えば、太っている女性に対して皆の目の前で、「太りすぎだからダイエットした方が良いよ。」と発言をする人がいた場合。
性格に難ありの人は意地悪として発言しているのにたいして、発達障害の人は本当に善意で発言していて、悪気は全くないのです。
しかし、周囲を凍り付かせる発言であることにはかわりはありません。結局、皆から「変わった人」のレッテルを貼られるのです。

様々な統計から発達障害は人口の10%と指摘されています。
もし、この記事を読んで「私って・・・」と思った方、ぜひ自己チェックをしてみてください。

大人のADHD症状チェックリスト:成人(18歳以上)用
http://adhd.co.jp/otona/selfcheck/

ADHDのためのセルフチェックですが、一度試してみてください。

これから、大人の発達障害シリーズを展開していこうと思っています。
まだまだ、私も勉強不足なので間違った情報があれば、いつでもご指摘ください。

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文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
 株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
 代表取締役 所長
 認定産業医/労働衛生コンサルタント
 認定内科医/循環器内科専門医
 日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
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