日本人は高度不安民族?!

人事担当者:「先生、ずいぶんとコラムをさぼっていましたね。もう、やる気がなくなったかと思っていましたよ。やる気スイッチならいつでも押しますよ!」
小太り産業医:「そうそう、背中の真ん中あたりのでっぱりを押して・・・って!そんなスイッチないわ!」
人事担当者:「ノリツッコミですか・・・。あまり、高等テクではないですね。失望です。」
小太り産業医「申し訳ない・・・。(なんで、俺が謝らなくてはいけないの?)」
人事担当者:「こんなにサボっていたら”不安”になりませんか?」
小太り産業医:「そうそう、みんなが”結局最初だけかよ!”とか”ネタ切れか!”とか思われてるんじゃないかってね。」
人事担当者:「週刊少年ジャンプでページが後ろにされ、突然連載が終わるように、もう止めさせられたかと思いました。人気がなくて。」
小太り産業医:「余計に”不安”が増大するなぁ・・・。」

皆さん、本当にお久しぶりです。小太り産業医が帰ってきました。
もう、読んでいただけないか”不安”で胸がいっぱいです。
ちょっと、今日は難しい話です。お付き合いくださいね。

・セロトニン

読者の中には知ってる方も多いと思いますが、うつ病と深くかかわる神経伝達物質の一つに”セロトニン”があります。セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつであり、感情や行動を左右する他の神経伝達物質であるドーパミン(快楽、喜びなど)、ノルアドレナリン(恐怖、怒り、驚き)などをコントロールして精神安定を図る作用があります。
さらに生体リズムや睡眠・体温調節などにも関与しており、不足することでうつ病などの精神疾患を発症しやすくなると言われています。

ちょっと、難しい話になってしまいました。でも、もう少しお付き合いください。
じゃあ、セロトニンを調節しているモノは?

・セロトニントランスポーター遺伝子

セロトニンの量を調節しているのが、セロトニントランスポーターというタンパクで、神経細胞から出たセロトニンを再び細胞内に取り込む役割を担っています。そしてセロトニントランスポーターというタンパクの機能を決めているのが、セロトニントランスポーター遺伝子なのです。
セロトニントランスポーター遺伝子は2種類あり、長さで分けられていて、短い(Short)のS型、長い(Long)のL型があります。S型は多ければ多いほど“内向的で従順”な性格になるといわれ、セロトニンの再取り込み機能が低く、不安傾向との相関関係があると言われています。一方でL型遺伝子は逆に自主独立の性向が強く、社交的で活動的”な性格になると言われています。
我々は、父親と母親から一本づつ遺伝子を受け継ぐため、この型の組み合わせで対となります。つまり、人はS型を2本持つSS型、L型を2本持つLL型、そしてS型とL型を1本ずつ持つSL型に分類されます。また、SS型の人はSL型、LL型よりも不安を感じやすい傾向にあることが分かっています。

・日本人で多いのは?

SS型、SL型、LL型の比率は人種によって異なり、ある調査の結果として、L型の平均本数が黒人で1.47本、白人で1.12本であるのに対し、アジア系の人の平均は0.69本であると記されています。つまり、黒人や白人の場合は多くの人がL型遺伝子を持つのに対し、アジア人はL型を持つ人が少なく、SS型が多いことになります。中でも日本人は、S型を持つ人の割合が高いと言われています。
2009年に発表された調査では、29カ国50,135人の遺伝子調査の結果。東アジア人はS型遺伝子を持っている割合が70~80%と高く、ヨーロッパの40~45%と比べると倍近い数値になっています。
S型遺伝子保有者の割合が一番高いのが日本で80.25%、2番目が韓国で79.45%、以下、中国75.2%、シンガポール71.24%、台湾70.57%となっています。
アメリカ44.53%、英国43.98%、ドイツ43.03%、スペイン46.75%となっており、欧米人と比べるとアジア人が圧倒的に不安を感じやすい人種であることがわかります。
最も低いのが南アフリカの27.79%で、アフリカ人は比較的不安を感じない人が多いようです。ちなみに、不安を感じにくいLL型の人は、日本人では3%ほどしかいないようです。

・日本人は高度不安民族

なぜ、日本人は強く不安を感じる民族になってしまったのでしょうか?
ここからは小太り産業医の独自の見解です。人類の発症はミトコンドリア遺伝子からアフリカの女性であることがわかっています。人類はアフリカを出発し、そしてヨーロッパ、中央アジアを通り抜け極東に到達しました。その間に、猛獣に襲われたり、寒く危険な山脈を越えたりなど様々なリスクを通り越して極東に至りました。これらのリスクが極東アジア人の不安遺伝子を増幅させる結果となったのかもしれません。

様々研究から、もともと日本人は不安に感じるように遺伝子にプログラムされているのかもしれません。それは日常にもよく表れています。
例①:がん保険
欧米ではほとんど売れていません。某国の保険会社のほとんどの売り上げが日本で荒稼ぎした分だといわれています。

例②:集団行動
一人での行動、突出することに不安を感じ、集団で行動することを比較的に日本人は好みますよね。この性質を表現している言葉にビートたけしが言った「赤信号、みんなで渡れば怖くない」があります。
集団行動すれば、不安も消え去るということです。

日本人が不安を強く感じてしまうのは仕方がありません。大事なことは不安とどうやって付き合うかです。

人事担当者:「先生、ボクは不安を見たことありますよ!」
小太り産業医:「不安を可視化する方法でも知ってるの!?」
人事担当者:「上野動物園で見ましたよ。」
小太り産業医:「それ、パンダの歓歓(ファンファン)だろ・・・。」

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株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
代表取締役 所長
認定産業医/労働衛生コンサルタント
認定内科医/循環器内科専門医
日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター

新井孝典(あらい こうすけ)
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