定年退職後の役割と人間関係は、現役時代から準備する

みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。

平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業 健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業『健康経営オフィスレポート(経済産業省H27)』※1によると、健康を保持・増進する7つの行動として、次のことが挙げられています。

「A.快適性を感じる/B.コミュニケーションする/C.休憩・気分転換する/D.体を動かす/E.適切な食行動をとる/F.清潔にする/G.健康意識を高める」です。
これらの行動をオフィス内で日常的に誘発させることが重要だと記されています。

「A.快適性を感じる」には、社内に野菜工場があり、緑化スペースをふんだんに作っている企業の写真が紹介されています。通路の壁は、植物に覆われた緑です。歩くだけで光や空気を快適に感じる仕掛けでしょう。

「B.コミュニケーションする」は、「気軽に話す/挨拶する/笑う/感謝する、感謝される/知る(同僚の業務内容、会社の目標など)/共同で作業をする」と説明が載っています。「笑う」は、コミュニケーションを促進するためにも大切ですね。

※1)健康経営オフィスレポート(経済産業省H27)(P3,P4)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf

「衣食住は満たされているのに、心は満たされないのです。退職して、役割と人間関係を失いました」 
これは、定年退職後の雇用延長期間を終了した男性の言葉です。
言い換えれば、「心を満たすには、役割と人間関係が必要だ」ということでしょう。

会社には「役割と人間関係」があり、コミュニケーションがなされています。
上述の「コミュニケーションする」は、会社や組織に属していると、当たり前のように発生していることです。
しかし、所属がなくなるとその頻度は減っていくことでしょう。「心を満たす」ためにも、現役会社員時代から、定年退職後の「所属」を考えておく必要があります。

『満足度・生活の質に関する調査に関する第1次報告書』(内閣府、令和元年5月24日)※2を見てみましょう。
「『健康状態がよい』ほど満足度が高い。『頼りになる人の数やボランティア活動の頻度等(ソーシャル・キャピタル)が増加する』ほど満足度が高い。『趣味や生きがいがある人』ほど満足度が高い、ことが判明した」とあります。

「頼りになる人の数やボランティア活動、趣味や生きがい」は、人とのコミュニケーションなしには存在しないでしょう。「誰かのお役に立てる」ことを感じ、自分の役割があることを喜んだり、「頼ってもいいんだ」と肩の力を緩めたりは、人とのかかわりを通して実感します。趣味の場所に行くと仲間がいます。
「生きがい」を持って生活している人は、「イキイキした人」で、笑顔で接してくれる人でもあります。これらは、人とつながっていることで得られるものです。「健康状態」にも大いに影響することでしょう。

※2)『満足度・生活の質に関する調査に関する第1次報告書』(内閣府、令和元年5月24日)(P8~10) https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf

定年退職まであと2年を残し退職を決めた男性は、いつもニコニコしているので人気の事業所長でした。転勤が決まるたびに、毎回社員から送別の花束や贈り物をたくさん受け取ってきました。「惜しまれて退職していく人」です。
郷里に帰って新たに事業を始めます。学生時代からやってきた趣味の音楽も継続です。住む土地が変わっても、「所属」を見つけることに苦労はないでしょう。「現役時代の過ごし方、どのように人とのつながりをつくってきたか」は、会社を離れた後に影響します。会社に属しているときが準備期間です。

日本ストレスチェック協会の入門講座「不安とストレスに悩まない7つの習慣」では、「ストレス対策」について学びます。それは、「人生の時間を、どう使っていくか」を考えることにもつながっています。将来を見据えたストレス対策としても有効です。満足度の高い人生を歩むために、ご一緒に考えましょう。

奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント 
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/