精神科主治医はハラスメント判定者なのか?

さて、今回の小太り産業医はちょっと怒ってまして、いつのも会話形式を取りません。
「ギャル語怒りの6段活用」から引用するとすれば、「カム着火インフェルノォォォォオオウ」ぐらい怒ってます。

詳細は、https://bit.ly/2lXjRENを参照してください。

クライアントの従業員から診断書が提出されました。
病名は、
「身体表現性自律神経機能不全」
さらに、病名の下に
「上司からのパワーハラスメントが原因にて上記疾患に罹患しております。早急に上司との関係性を改善すべく措置を講じてください。」
ですって!

ちょっと、待て待て主治医よ。
あんたは、患者の一方的な話しを聴いただけで、パワハラと断定できるほどの千里眼を有しているのか?
そもそも、主治医にそんな権限など存在していません。
少なくとも法的にハラスメントと断定できるのは、労基署ぐらいです。

それとも、患者の言うがままに診断書の文言を書いたのか?

既に降圧剤を内服している小太り産業医でも、その薬効が吹き飛ぶぐらい血圧が上がるほどの怒りを感じてしまいました。
主治医には、
・先生は厚生労働省が示すパワハラと認められる3要素をご存知でしょうか
・一方的な意見から、弊社におけるハラスメントと断定する根拠を示してください
・もし、これらの根拠が示せないのであれば、予断を省いた診断書を再発行してください
という旨のお手紙を書きました。

すると、お手紙のお返事はいただけませんでしたが、「予断を省いた診断書」は再発行してくれました。

精神科主治医がハラスメントが原因だと断定してきたケースは、今回で4例目です。
1例のみ、会社の検証でハラスメントと認定されましたが、他3例は認定されていません。
私は4例ともハラスメント判定に関わっています。
認定されない理由は様々ですが、被害意識の強さもあると思います。それは、「認知の歪み」が原因かもしれません。「認知の歪み」がメンタル不調の原因にもなり得るのでしょう。

この様なケースは会社の健康管理に関わる人事、総務などHR系にとって、産業医への試金石となります。
・こんな断定的な診断書を作成する主治医に対して、どう対処するのか?
 ⇒全面的に主治医を支持し、患者側に立って会社を攻撃するのか
 ⇒中立・公正の立場で判断してくれるのか

医者は医学教育を6年間受ける中で、「患者に寄り添うように」、「患者に対して性善説をもって望むように」と教えられます。
外来に咳き込みがひどい患者が「つらい、つらい」と訴えているのに、「またまたぁ~、演技しちゃって!」なんて言い放つ医者はいないでしょう。
ただ、産業医は別です。
職場環境は視点によって、捉え方は大きく変わります。様々な視点から、判断する能力が求められます。職場環境や従業員の人間関係も把握せずに、ハラスメントと断定することはできません。

主治医も患者のためにと思って、診断書を書いているのでしょう。ですが、安直な断定が結果、従業員でもある患者の立場を悪化させてしまうこともあります。
これについては、いつか書きます。

私は実際にハラスメントが原因でメンタル不調に陥った従業員を、何人も面談してきました。その際には会社側、上司、ハラスメントを行った従業員に対して厳しい意見を伝えています。

産業医とは、多角的視点から判断すべきです。
それができないなら、産業医はやるべきではないでしょう。
従業員、会社、産業医と全てが不幸になります。

さて、怒りをぶつけてしまうような文章を書いてしまいました。
気持ちを抑えるには、甘いモノが必要です。今は0時に近いですが、アイスを食べて寝ます。

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文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
代表取締役 所長
認定産業医/労働衛生コンサルタント
認定内科医/循環器内科専門医
日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
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