産業医が明かす ストレスに強い人はどんな子供時代を送ってきたか①

私は産業医として、外資系企業を中心に20数社のクライエントを持ち、年間1000件以上の従業員との面談を行っています。
そして、わかったことがあります。
それは、外資系企業はやはりタフでハードな職場環境だということです。
安定しているとは言えない雇用状況の中で、高いプロ意識を持ち続け、
グローバルビジネスの激しい変化に適応することが否応なしに求められるビジネス環境です。
そのような中、学生時代にどんなに優秀だった人でも、社会人になってストレスに悩み心身ともに疲弊し、
潰れてしまう従業員もしばしば見かけます。
一方、学生時代はクラスの平均かそれ以下だった人が、社会人になってからは結果をしっかりだし、
また、人望も厚くどんどん昇進していくこともあります。

私は、10年近くの間に通算1万人以上の働く人たちとの産業医面談を行いつつ、
メンタルヘルス不調者に注目するだけではなく、タフでハードな環境でも不安やストレスで悩まず
元気に前向きに働き続ける人たちにはどのような特性があるのか、何が共通しているのかを観察してきました。
そして、大人になってからのこのような社員たちが持つ習慣や心構えが7つに集約されることを見つけました。
この人たちは、もともとそのような習慣や心構えの人もいたでしょうが、
入社後に自ら学んだり気づいたり、時に傷つくことでそれを身につけてきた人たちもいます。
このような人たちには、子供(学生)時代に共通する育まれ方があることがわかりました。
外資系企業のタフでハードな環境においても、ストレスで悩まず、潰れることなく元気に働き続ける人たちに共通して、
子供(学生)時代に育まれたことを紹介します。

ストレスに強い大人の子供時代を聞いてみると、多くの人が、認知能力だけでなく、
非認知能力を継続的に育まれてきた共通点がありました。
その結果、彼彼女らは認知能力を上回る非認知能力を持っているのです。

認知能力とは、ハードスキルと言われるような、テストの点数や偏差値、IQ等、数字で示され従来の勉強で測定可能なものです。
言われたことをやる、過去問、塾や予備校、丸のみ丸暗記等の時間効率がよい勉強で得られやすい特徴があります。
一方、非認知能力は、ソフトスキルと言われるような、前述のような数字では測れない総合的人間力を意味します。
勤勉性、開放性、外向性、協調性、精神的安定性などが代表的ですが、
他に、まじめさ、好奇心、社交性、利他性、自己肯定感、責任感、想像力、やり抜く力、
活動性、自己効力感、自主性、積極性、コミュニケーション力、共感力、回復力、意欲、
柔軟性、自信、自制心、忍耐力などなど、あげればきりがありません。

なぜ“総合的”と私がいうかというと、例えば、回復力(レジリエンシー)に優れる人は、
回復力に優れるためだけでメンタルヘルス不調になりにくいのではありません。
そのような人は多くの場合、職場で日頃から上手にコミュニケーションを行なっていたり、
わからないことを人に聞く素直さや謙虚さ、加えては周囲を巻き込む行動力、
そして己自身の試行錯誤ややり抜く力なども持っているため、そもそも回復力をそこまで要さない、
要したとしても周囲がサポートしやすい人であることを、私は産業医として多く見てきました。
非認知能力とはこのように、複合的なものなのです。

では、どうして、「非認知能力」をつけることが、ストレスに強くなる子育てに繋がるのでしょうか。
同様に、どうして、「非認知能力」がないとストレスに弱く育ってしまうのでしょうか。

そこには、子供(学生)から大人(社会人)になると、求められることが突然変わるということが挙げられます。
これに上手に対応できないことが、メンタルヘルス不調の原因になっていることが多々ありますが、
「非認知能力」の高い人はこの変化にしなやかに対応できているのです。

※この続きは7月10日(水)に公開予定です。どうぞお楽しみに!