ストレスに悩まされない人のもっている習慣 構える、区切る

 人は予想していないことや想定外のこと、緊張した状況が連続したり終わりが見えない時、
より大きくストレスを感じます。
 ストレスに悩まされない人たちは、
このような2つの状況に上手に対処する習慣を持っています。

 自分に想定外のことが起こった時、できる人ほど想定外を考えておらず
実はストレスに弱いという例を、私は産業医としてたくさん見てきました。

 一方、これに上手に対処している人たちは、
「想定内の範囲が大きい」という特徴を持っています。
しかしこれは決してA、B、Cパターンのようにあらゆることを想定しているのではありません。
この人たちはベストシナリオ以外にも、
想定外の最悪のパターンを想定しているため、想定内の範囲が大きいのです。
そして想定内のことについては、身“構えて”対処することができているのです。 

 考えるべき想定外のパターンは人それぞれですが、
まずは仕事、人間関係(家庭)、お金、健康、住居などの想定外を
考えてみるといいのではないでしょうか?

 緊張した状況が休みなく続くことも、多くの人にとってストレスになります。
この種のストレスに上手に対処している人たちは、
その状況を“区切る”ことにより
緊張という感情を上手に断ち切ることができています。

 ストレス原因に直接対処するのではなく、
休憩時間や休暇を積極的に取り入れたり、
ストレスのある場所(会社)から空間的な距離をとることで、
連続する緊張した感情を時間的・空間的に区切っているのです。

 社員食堂でお昼を食べるよりも会社からでた方が気分転換になりますし、
週末に郊外にドライブに行き日常生活から距離をおくことで、
自分の状況を冷静かつ客観的・俯瞰的に考えることができた経験をお持ちの方は多いと思います。
ぜひ、皆さんも疲れてから休むのではなく、
疲れる前にあらかじめ“区切る”を実行してみてください。

 他に、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚等の五感に変化を与えることで、
緊張した気分を区切っている人たちもいます。

 人間の感情は、五感に多大な影響を受けています。
 例えば、視覚が人間の脳に無意識のうちに働きかけるのは、
「カラーセラピー」として利用されています。
相手をリラックスさせたい、落ち着かせたい空間では、木目調(茶色)や緑が利用されています。 
スターバックスのカラーが、その典型例と言えるでしょう。

 一方、マクドナルドを思い浮かべてみてください。
マクドナルドでは、赤や黄色が使われています。
お客さんの回転率を上げたいお店では、赤を効果的に用いることにより、
お客さんが落ち着きすぎないように工夫しているのです。

 視覚以外にも、他の感覚を利用して、気分や感情を変えている事例はたくさんあります。

 有名なのは嗅覚を用いた気分転換、「アロマテラピー」です。
例えば、寝る前にラベンダーのアロマオイルが香るようにしていると、
ラベンダーの香りをかいだだけで、リラックスできるようになります。
また、仕事へ行く時にシトラスの香りを嗅ぐようにしていると、
シトラスの香りが仕事モードになるのを助けてくれるという効果があります。

 そうした効果を利用するため、会社の受付でいつもシトラスが香るようにしている会社もあります。

 この他にも、例えば味覚ならば、甘いものを食べて気分転換をはかるとか、
スパイシー料理や激辛を求める。
 聴覚ならば、好きな音楽を聴くというのは、多くの人が意識せずにやっている習慣と言えるでしょう。

 また、お風呂や温泉に入り、
触覚を刺激する等々の行為を通じて緊張を和らげたり気分を変えるなどは、
多くの人が無意識にやっていることです。
読者のみなさまも考えてみるとそのような習慣をお持ちかもしれません。

 このように、人間の感情は、五感にかなりの影響を受けています。
だからこそ、五感を区切ることは気分転換において、とても重要なのです。

 マラソン選手がベストコンディションで走りきるために喉が乾く前に水を飲むように、
自分のコンディションをいい状態に保つためには、
この2つの習慣は、ストレスを溜める前にやるとさらに効果的です。
今まで無意識してやっていたことも、これからは意識してやってみてください。
より効果を実感できるはずです。

 

文責:武神 健之
一般社団法人ストレスチェック協会 代表理事
医師、医学博士、日本医師会認定産業医