日本ストレスチェック協会の考えるストレスとは

 どこの会社にも同じような環境で働くにもかかわらず、メンタルヘルス不調になる人とならない人がいます。メンタル不調にならない人たちは、なってしまう人たちに比べ、何が違うのだろうか。
日本ストレスチェック協会の代表理事武神は、1万人を超える産業医面談の上、「ストレスに対する考え方と対処の違い」であると答えを導き出しました。
 ストレスに悩まない人たち、つまりメンタル不調にならない人たちは、ストレスを「強度」✖「持続時間」と、とらえています。

 ストレスの「強度」とは、ショックの大きさ、インパクトの強さとも言い換えられます。誰でも、予想していなかったことにいきなりガツンと見舞われたら、ダメージは大きいでしょう。たとえば予期していない大地震や飛行機がビルに突っ込んだ等の事件が起きたときのストレスを考えれば、おわかり頂けると思います。一方、予想できていることにはそれなりに耐えられます。予測していたことに関しては、ストレス強度は低くなります。例えば、気分良く出社して上司にいきなり怒鳴られたら大きなストレスでしょうが、「最近結果を出していないから、そろそろ怒鳴られるかな」と思っていたとしたらストレスとしては比較的小さいのではないでしょうか。
日本ストレスチェック協会の考える”ストレス”
 ストレスの「持続時間」とは、そのような刺激や状況・環境が、いつから続いてきたのか、いつまで続くのかということです。このことも個人がストレスをどれくらい大きく感じるかということの重要な因子になります。
 ストレスを抱えている人に、「いつからこの状況が続いているの?」と尋ねたときに、「去年の10月にみんなの前で叱られた時から」とか「3月に失敗してから」とか、始まりがわかっている人は、「いつからかわかりません」と答える人に比べてまだ大丈夫です。
 未来に関しても「いつまでこの状況が続くの?」と聞いて、「今月いっぱいでこの仕事が終わります」と答えられる人と、「いつまで続くかわかりません」としか言えない人だったら、どちらがストレスを感じているかは、明らかです。

 さらに、ストレスとは、精神的・肉体的に負荷となる刺激です。ストレスはあくまで刺激であり、そこに良いも悪いもありません。しかし、多くの人はストレスと言えばネガティブに捉えています。たとえば筋肉痛を考えてみましょう。筋肉痛が好きな人はあまりいないと思いますが、ボディビルをやっている人の中には筋肉痛があると「昨日のトレーニングは効いたな」と嬉しく感じる人もいます。同じ筋肉痛という状況(=ストレス)でも、感じ方は人によって違うという例です。ストレスはあくまで、精神的・肉体的に負荷となる刺激であって、それをどのように解釈するかは人によるのです。

年に1度は誰もが真摯にストレスについて考えるときにこそ…

 ストレスの原因を探すよりも、ストレスというのはそういうものなのだと捉えて、ではどういう対策をとっていこうかと前向きに考えることができれば、ストレス対策は、もっと話しやすい、もっと親しみやすい、もっと明るく対処できるものになるのではないでしょうか。
 ストレスは「強度×持続時間」で説明できる。そして、ストレスに上手に対処している人たちは、どのように対処したり、どのような習慣を持っているか。
 日本ストレスチェック協会では、ストレスチェック制度が始まり、年に1度は誰もがストレスについて考える時、上手にストレスを理解し対処していく方法を学ぶ、世の中にそれを問いかけています。

年に1度、上司の誰もが真摯に自分のコミュニケーション技術について考えるとき…

 どんなに個人がセルフケアで頑張ったとしても、会社で心ない上司にガツンとやられたり、心ない一言に傷ついてメンタルに不調をきたしてしまうときもあります。
 産業医としての経験上、ある部署から年に2人以上メンタル不調者が出た場合は、たいてい2つ原因のどちらかがあると感じます。1つ目はその部署に、業務として負荷がかかり過ぎていること、2つ目はその部署の責任者にクセがあってメンタルに関する理解に乏しいということです。そして、そのような上司に限って、人事から何か言っても聞く耳を持たないことが多いことも知っています。
 今後、ストレスチェックテストに伴い集団的分析を行うのであれば、この集団的分析の結果を返すときは、管理職研修がもっとも効果的なときと思います。どのような上司も普段よりは真摯に、ご自分のコミュニケーション技術について考え、上司としてのメンタルヘルス対策の具体的方法に耳を傾けてくれるのではないでしょうか。