みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。
大学の秋学期授業が半分過ぎました。担当しているのは大学2年生を対象とした「キャリアデザイン」の科目です。いじめ、不登校など、小中高のどこかで苦労をした経験を持つ若者が少なくありません。自分に自信がなく、教室での発言もためらいがちです。たくましさを求めたくもなりますが、人を排除することを決してしない、優しい若者たちです。
自己肯定感を高めてほしいと願い、「教室は何を言ってもいい場所、どんな考えも発言もお互いに受け止めるところ。学びは明るく楽しく」を促しています。
先日、初回授業からのふりかえりをし、「ここまでで印象に残っていることと、その理由」をたずねたところ、私の言葉を出した学生がいました。
「『他人から、自分について何か言われる』ことは、これまでもあったことと思います。今後もそれは続きます。他人から言われることに慣れてください。でも、言われることを何もかも受け取って、その通りにしよう、なんてしていたら疲れます。『なんか変、納得いかない』と思ったら、それは捨ててしまいましょう。『何を受け取るか』は自分で決めていいのです」というものです。
「親や教師の言うことをちゃんと聞いてきた。その通りにやってきた」学生でした。批判や自分を否定されるような言葉は傷つきます。「親が言ってるんだから、先生が言ってるんだから、やらなきゃ」で頑張ってきましたが、心は消耗します。「自分のことは、自分で決めていい」と知って救われたと言っていました。
彼らも就職活動を経て卒業し、いずれは職業人生をスタートさせます。就職活動中、親から、子への指示なのか命令なのか、もしくは親自身の単なる希望なのかよく分かりませんが、「アドバイスらしき」ものをもらう場合があります。「子を心配して」が背景にあるので、心配してくれる気持ちはありがたく受け取りますが、「話の内容のどこを受け取るか」自分で選択しましょう。
働き始めると、「仕事」についてフィードバックや注意、指導、教育などとして、厳しい言葉ももらうようになります。ほめ言葉もほしいのですが、職場ではあまり期待できないでしょう。
こうして「何か言われるのは普通のこと」と、いまから慣れておいてほしいのです。大切なのは、「捨てるもあり」と知っていて、実行することです。周囲の人がそれぞれに、「あなたのために」とアドバイスをくれるかもしれません。せっかく言ってくれたのだからアドバイス通りにしないと申し訳ないと感じ、「複数人の言葉を全部受け取って、全部そのとおり行動しなければ」と考え行動していたら大変です。「何が自分にとって大切なのか、自分は何をしたいのか」がわからなくなります。「捨てるもあり」です。「自分のことを思ってくれた気持ち」だけを、感謝して頂戴します。
日本ストレスチェック協会の講座「不安とストレスに悩まない7つの習慣」では、「捨てる」を紹介しています。ストレス知らずで、元気に働いている人は、「捨てる」のが上手なのです。「捨てる」は、言い換えると「優先順位をつける」ことです。
「やらなければならない」ことがたくさんあると、焦りや不安が増します。「~しなければならない」は、「無理をしながら必死にがんばる」ことになります。無理に無理を重ねていくと、ミスや失敗が発生し成果が出ず、悪循環に陥る可能性もあります。
「やらなければならないこと」にも、優先順位があるはずです。整理しましょう。付箋に書いて並べ替えしてみましょう。「他の人に頼めるもの」がわかるかもしれません。お願いをして、その付箋は捨ててしまいましょう。優先順位の最後のほうになったことについては、「今週はやらない」などと決めて、「今週の作業」から捨てましょう。
「捨てるもあり」なのです。「何を受け取り、どう行動するか」は、自分で決めていいのです。
奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント・大学非常勤講師
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/