先生の敬語

みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。

 日本ストレスチェック協会では、大人が学ぶ「子どものストレス対策講座~ストレスに強い大人になるために、子ども時代に身につけたいこと~」をご提供しています。子どものストレスは、大人のかかわり方次第。まずはかかわる大人が変わろうと、そのポイントを学ぶ講座です。

大人が変わると効果的なことの一つに「言葉」があります。「ほめて育てよう」と分かってはいるけど、「つい怒ってしまう」のは大人の日常かもしれません。

 ある高等学校を訪問したときのことです。門をくぐると、体育着でランニング中の生徒が「こんにちは」と挨拶をしてくれました。廊下ですれ違ったときも、体育館に入ったときも、多くの生徒たちが「こんにちは」と声をかけてくれる学校でした。

 体育館に学年全員約200人が集まって授業です。入室~クラスごとに整列まで、先生の指示にてきぱきと動いていています。指示を出す先生は、「はい、協力ありがとうございます」と、生徒たちの動き一つひとつに「ありがとう」を言っています

 この学校では、先生が生徒たちに「敬語」を使っていることに気づきました。「~です。~ます」と丁寧語で話します。タメ口でもなく、「早くしろ!」と命令でもなく、丁寧語で大人同士の会話をしています。生徒たちを信頼し、「先生の言うことにただ従っていればいいだけの子どもにしない」、としているように感じました。自分で考える人に育てるには、友だち関係でもなく、上下関係でもなく、対等な関係で人と人として会話することが重要だと考えているのでしょう。

 コミュニケーションの授業はにぎやかすぎるほどでしたが、明るく元気な生徒たちでした。笑顔が出る様子は、見ている先生方にも笑顔を伝染させていました。退室時も元気よく「ありがとうございました」と声をかけてくれました。先生と生徒の関係を「先生の丁寧語」で良好にしているように感じました。

 一方、体育館に全クラス集合でもやり方の異なる学校がありました。急ぐことのない生徒たちに先生の大声。「前へ倣え!」で整列。その後先生による個別の服装チェック。チャイムがなっても始められず、先生に怒られることから授業開始。終了後、服装チェックでマークされた生徒は前に呼び出され、一人ずつ先生方に囲まれて再び怒られる。帰りがけに見かけたこの指導は、「怖い」ものでした。

 厚生労働省の平成26年度全国家庭児童調査結果(小学校5年生から18歳未満までの児童対象)に気になるデータがありました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/5zentai.pdf
「不安や悩みがある:56.0%」です。その内容は、多い順に、自分の勉強や進路について:77.7%、自分の性格や癖について:36.2%、自分の顔や体形について:33.0%でした。働く大人と同様に半数以上の子どもが不安や悩みを抱えています。

 気になるのは、相談相手です。「相談相手はいない:9.9%」とありました。1割近くの子どもは、悩みがあっても相談できないのです。「人に話を聞いてもらうと気が楽になる」のですが、その相手がいなければ、辛さ苦しさが続くことでしょう。いつか相談相手を見つけてほしいと願います。

 「何かあったら相談していい大人」になりたいものです。使っている「言葉」が子どもにマイナス影響を及ぼしていないか、大人自身が、自分のかかわり方をふりかえりたいと思います。

奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント 
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/