元農水省次官が長男を殺害した事件。
元次官は、引きこもりがちの長男から暴力を受けていたのだという。
果たして引きこもりにならない子育て方はあるのだろうか?
「私は、産業医面談を通して、タフでハードな環境でも
不安やストレスで悩まず働き続ける人たちの特性を観察してきました。
そして、このような人たちには、子ども(学生)時代に共通する育まれ方があることがわかりました。
それはテストの点数や偏差値、IQ等、数字で示される認知能力だけでなく、
コミュニケーション力などの非認知能力が高いこと。
社会に出ると、学生時代とは違い自分が劣っていることを認めざるを得ません。
時にはショックを受け、そのような場には足が向かなくなる。
このような反応は、落ち込み(抑うつ)、逆ギレ、引きこもり(遅刻の常習や出社拒否)という形で現れます。
一方、非認知能力の高い人は、自分の知らなかった新しい世界の人々と交わり協議協調し、
試行錯誤を繰り返し、転んでも立ち上がることができます」
では、なぜ非認知能力をつけることが、ストレスに強くなる子育てに繋がるのか。
そこには、大人になってから求められることが、
「勉強」から「仕事」に変わることが関わってくる。変化の要因は大きく3つ。
1つめは、「自分の問題を解決すること」から「相手の課題を解決すること」への変化。
2つめは、気の合う友達と過ごしてきた環境から、
仲良くしづらい人とも一緒に過ごさなければならない環境への変化。
ストレス原因として、「職場の人間関係」は常に1位か2位かランクされる。
3つめは、テストの点数で評価をされることから行動で評価されることへの変化。
成果に至るまでは机上の理論ではなく、プロセスが評価基準となる。
「これらに対応できないことが、メンタルヘルス不調の原因になっていることが多々ありますが、
非認知能力の高い人は回復力が上回り,この変化にしなやかに対応できているのです」
では、非認知能力はどのようにすれば身につけられるのか。
「未就学児であれば、好きな遊びに集中して取り組ませてあげること。
親と一緒に絵本の読み聞かせや、料理・掃除・片づけなどをする。
そして、許容範囲内で失敗も経験させること。就学後は様々な体験活動を継続させる。
学校や地域における好きなクラブ活動などで、仲間たちとともに、
挑戦・成功・失敗などの体験を継続することで、周囲との協調や思いやりを含めて
身につけられるのだと思います。
好きな遊びや部活動、絵画やボーイスカウトなどの活動を続ける。
好きなことに仲間たちとともに継続的に没頭する中で
感情(好きや楽しさ、達成感や悔しさ、協力や思いやり)のサイクルが自然と回り、非認知能力は育ちます」
2020年春から小学校における指導要領が改訂される。時代を見据えた新しい指導方針に期待したいところだ。