LGBTQで悩むのは本人だけではない。

小太りさん産業医:「ここ最近、いろんな企業でのLGBTQへの取り組みを耳にするよ。」
人事担当者:「更衣室、トイレなどの問題がありますからね。」
小太りさん産業医:「この問題は、本人の不安や悩みだけの問題ではなくて、周囲、特に家族にも大きな影響を与えるね。」
人事担当者:「というと?」
小太りさん産業医:「当然、良い意味で日本的保守的価値観と対立して、受け入れられないことが多い。」
人事担当者:「たしかに、おねえタレントさんたちの両親との関わり合いで、壮絶な話しも聞きますね。」
小太りさん産業医:「今回は、娘から性同一性障害を告白されて、父親がメンタルをやられてしまったケースだよ。」
人事担当者:「今回は、前座の会話でお笑い要素は一切ないですね。」
小太りさん産業医:「この問題は、笑って済ませられないよ。」
人事担当者:「そうですね。」

とあるクライアントで面談に来た50歳の男性Aさんです。
もともと、人間関係に悩み小太り産業医の継続面談になっている人なのです。
最近は、面談に来ていても表情も柔和になって、ニコニコとお話しされるし、メンタルクリニックの主治医からもどんどん減薬されている最中です。
ある日、予定でも無いのに突然面談にやってこられました。

小太りさん産業医:「あれ、Aさん。どうされました?」
Aさん:「実は・・・。娘が”自分は性同一性障害で気持ちは男なんだ”と告白され、夜も眠れなくなりました・・・。」
小太りさん産業医:「(゚Д゚)!!」

この話は3月に聞きました。娘さんは今年大学入学を決めていて、その春休みに両親に告白を決心したのでした。
どうやら、娘さんは高校時代からバイト代を男性ホルモン注射につぎ込んでいたことも発覚しました。

Aさんの気持ちの中は・・・。
・性同一性障害を告白への”驚き”
・どう対処したら良いかわからない”不安”
・悩んでいたこと、注射をしていたことに気づかなかった親としての自分への”憤り”
様々な思いが交錯し、またまた不眠に陥ってしまうのでした。

ただ、今回のAさんはひと味違うのです。
以前から、小太り産業医は「好きなことをする」、「区切る」、「不安を書き出してみる」等のアドバイスをしていました。
Aさんは今回、「不安だけではなくて、今の気持ちを書き出してみる!」と言ってA3用紙に、今の気持ちとさらに具体的対策・行動を書いてきたのです。
そして、行動を実行します。
・性同一性障害への理解を深める▶本やセミナーなどに出かける
・今後の息子(旧娘)の環境を整える▶大学に掛け合い、トイレおよびロッカーを用意してもらう
・ホルモン注射など医療面でのサポート▶専門家のいる大学に一緒に通院する
などなど。

おかげで、息子(旧娘)との絆は深まりましたが・・・。
どうやら、奥様は一向に息子(旧娘)の事は受け入れられず、父親・息子(旧娘)V.S.母親の対立構造が激化し、現在は家庭内別居状態に陥り、それが今度Aさんのストレス源となっているのです。

産業医としては、家族内のストレスまで首を突っ込むわけにはいきません。今後の経過を見守るだけです。
でも、Aさんが思いがけない告白に対して、ストレスを感じながらもしっかりと受け止め、対処できたことは普段から私が言ってきたストレスと上手く付き合う方法を実践してくれたからだと思います。
Aさんの奥さんにも、私からお話ししてみたいです。

Aさんが突発的なストレスと上手く付き合うことができたのは、普段の面談からストレスチェック協会の「不安とストレスに悩まない7つの習慣」を取り入れるよう勧めていたからだと思い、嬉しくなりました。
みなさんも是非、この習慣を身に付けてみませんか。

小太りさん産業医:「今更だけど、LGBTQってしってる?」
人事担当者:「L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)ですよね。Qは?」
小太りさん産業医:「Q(クエスチョニング)は自分の性別がわからない・意図的に決めていない・決まっていない人だよ。」
人事担当者:「へ~、知らなかった。」
小太りさん産業医:「最近は、MrとかMsではなくて、Mxと名前の前に書く人もいるんだよ。」
人事担当者:「どっちか、わからない”x”ですよね。」
小太りさん産業医:「X Japanのファンではないよ。」
人事担当者:「先生、Mx!(マジで無し(バツ))」

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文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
代表取締役 所長
認定産業医/労働衛生コンサルタント
認定内科医/循環器内科専門医
日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
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