面談時に気を付けていること

産業医面談時、気を付けていること、意識していることは色々ある(つもり)ですが、
その一つに「本音を言ってもらえる面談でありたい」ということがあります。
産業医ではなくても、部下や後輩、同僚などの相談を聞く立場になったとき、
相手が自分を選んで相談してきている場合は、比較的最初から本音で話してくれると思います。
しかし、「直属の上司だから」「過重労働で呼ばれたから」などの理由の場合、
相談者と相談を受ける側とで信頼関係が築かれていない場合があり、
その場合は、もしかしたら相談者は本音を言っていないかもしれません。
私などは、「大丈夫です」という言葉の裏で、
「この産業医に言ってもどうにもならないし」などと思われていることも多々あると思います。

どうしたら有意義な面談になるのか、目下模索中です。
面談者全員と信頼関係を築くのは時間やタイミングもあり困難ですが、
なるべく形式だけの面談に終わらないようにしたいと思っています。
気を付けていることの一つは、基本的なことですが、
「守秘義務を守ること」「守秘義務を守ると伝えること」かと思います。
当たり前のことと思っていても、
意外と心配されて安心して話せない場合もあるので、お伝えするようにしています。

それから、「産業医としてできること」「今後の方針」も伝えるようにしています。
お話を聞いて、従業員さんの力になりたい、と思っても、
すぐには産業医が動くべきではない場合もあります。
また、産業医は何もしてくれないと感じる人もいる一方で、
産業医の権限に過剰な期待感を持っておられる場合もあります
そんな時、聞いて終わりではなく、今は動かなくても、今後、こんな対応ができる、もしこんな症状がでたり、
職場でこんなことが起きるようなら次はこうしましょう、といったことをお話すると安心して頂ける気がしています。
そして、相手が何を話しても、感情的になっても「慌てない」。
これらは、上司部下、その他の関係でも共通することではないかと思います。

先日ある工場に訪問したところ、上役の方が嬉々として、
「今年は過重労働の人数が10分の1に減りましたよ!」とお話してくれました。
しかし
ストレスチェックでは相変わらず高ストレスの人が多いのです。
過重労働の面談は減りましたが、高ストレス者に事前面談をすると、最初は早く面談を切り上げたいのか、
「大丈夫です」とおっしゃっていた従業員さんの本音は、上役のお話ぶりとは違っていました。
「昨年は月100時間残業していたのが45時間未満になった。でも、設備が新しくなったわけでも、
人員が増えたわけでも、生産数を減らしたわけでもない。減った残業時間、どうなったと思います?
この本音を聞くことで、現状が単に「時間を減らすだけの過重労働対策」になっていること、
今後「健康・働きやすさ」を重視した過重労働対策にシフトしなければならないことがわかりました。
(それをどうやるかはまた、難しい点ですが・・)

こうした本音を聞くのは、時としてこちらも悩ましい思いにさいなまれますが、
問題点がわかるからこそ、すぐには解決できなくても、
改善・成長に向かえる、とポジティブにとらえることにしています。
発展途上中の面談ではありますが、相談に乗ることの多い方の参考に少しでもなれば幸いです。

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川住幸子  日本医師会認定産業医

仙台かわすみ産業医事務所(合同会社メディカルロゼ)代表
http://medicalrose.co.jp/
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