俯瞰させることの重要性

小太り産業医:「皆さんこんにちは。お久しぶりです。」
人事担当者:「先生、誰に言ってるんですか?」
小太り産業医:「決まってるだろ、このニュースの読者様だよ。読者様は神様。」
人事担当者:「てゆうかぁ~。単にサボっていただけでしょ。」
小太り産業医:「リオオリンピックを見過ぎてました・・・。」
人事担当者:「閉会式にアベマリオが登場しましたね。」
小太り産業医:「そうそう、スーパーマリオブラザーズはなぜあんなに縦横無人にゲーム内を動けるのか知ってる?」
人事担当者:「どういう意味です?」
小太り産業医:「俯瞰視点だからだよ。」
人事担当者:「ふかんしてん?」

さて、のっけから小太り産業医が訳の分からないことを言っています。でも、安心してください。この記事の最後では皆さんに”ガッテンボタン”を押してもらえるでしょう。
よく指摘されることですが、メンタルヘルス不調者は”認知のゆがみ”が原因になっていることが多いのです。自分の勝手な思い込みが自分を責め立て、そしてメンタルの負のスパイラルに陥っていくのです。
私がこのようなメンタルヘルス不調者と面談するときには、まず”認知のゆがみ”を補正することら始まります。

では、例を挙げて見ましょう。紙面の関係上、割愛している部分もあります。
Aさん:入社3年目25歳男性開発部所属
周囲から見て明らかに、集中力の低下や寝不足がわかり産業医面談に来ました。
Aさん:「ここ最近、いろんな所から怒られてばっかりで、開発をやっていく自信がありません・・・。」
小太り産業医:「どこから、どんなことを言われたの?」
Aさん:「営業部から『いつまでかかってんだ!』とか、工場からは『早く試作品を作りたいから設計よこせ!』とか」
小太り産業医:「ふ~ん、それで自信喪失なの?で、自分の直の上司からは何か言われた?」
Aさん:「特に何も言われてません。怒られてもいないです。」
小太り産業医:「それぞれの部署は自分の都合で文句を言ってくるだけだから、ほっとけばいいよ。君のペースで仕事をしなさい。本当にヤバいなら君の上司に文句を言ってきているだろうし、上司もそれを君に伝えるでしょ。でも、それは無いのでしょ?」
Aさん:「はい、そうですね・・・。」
小太り産業医:「じゃあ、少なくとも上司は君に能力が無いなんて考えていないと思うよ。」

ここで、Aさんは”自分はいろんな部署から怒られているから自分には能力が無い”という間違った想像(認知のゆがみ)を感じていました。しかし、適切な質問を投げかけることによって、本人の”気づき”を促し『想像≠事実』だということをちゃんと認識させることによって、ゆがみを解消でできるのです。

次に本人に”俯瞰する眼”を持たせることです。
小太り産業医:「君は入社3年目だよね。」
Aさん:「そうです。」
小太り産業医:「じゃあ、君の周りの同期で誰からも怒られたり、注意されてない奴はいるの?」
Aさん:「いないですね・・・。」
小太り産業医:「そうだろ。たかが3年目で一人前に仕事している奴なんていないんだよ。それに、君に怒ってくる人たちも25歳のときは怒られていたんだよ。」
Aさん:「そうかもしれませんね。」
小太り産業医:「だから、自分だけじゃ無い。気にすることはないんだよ。」

Aさんは認知のゆがみから視野狭窄に陥り、俯瞰的な眼で自分を見ることができませんでした。しかし、これも質問によって本人に俯瞰させると気持ちも変わって、認知のゆがみをなくし、視野が広がります。

そして、ここで私が言うことは、
小太り産業医:「スーパーマリオブラザーズはマリオ視点でゲームをしたら、絶対にやられてしまう。でも、実際は俯瞰した画面でマリオを動かすから、クリボーやキラーから逃げられるんだよ。だから、時々でもいいから、自分をマリオにみたてて俯瞰して見る力を養うといいよ。」
Aさんは、面談後気持ちがだいぶ軽くなったと言って帰って行きました。

なかなか相手に気づきを促す質問を行うことは難しいかもしれません。慣れも必要でしょう。そして、あなたの力量も問われます。
でも、意識しながら場数をこなせば、きっとできます。小太り産業医も最初はできていませんでしたから。(笑)
自分で気づいたことについては本人は納得し、変わることができるのです。他人から短所を指摘されても、むかつくだけで変わらないでしょ。でも、自分で気づけば変わろうと努力しませんか?
自ら気づいて、自ら行動に移してもらう。これが大事なのです。

人事担当者:「確かに、先生に『最近太ったからダイエットした方がいいですよ』って指摘しても、先生は怒って否定しますよね。」
小太り産業医:「・・・。」

——————————————————————–
文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
 株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
 代表取締役 所長
 認定産業医/労働衛生コンサルタント
 認定内科医/循環器内科専門医
 日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
——————————————————————–