小太り産業医:「人事担当者くん、何聞いてるの?」
人事担当者:「ゲスの極み乙女の”私以外私じゃないの”です。いろんな意味で今話題です。」
小太り産業医:「ま、まあね。その歌はさ、今の自分の状況を目をそらすんじゃなくて、許容する歌でしょ。でも、中には今の状況から逃避する人もいるんだよ。」
人事担当者:「います、います。ボクの彼女もそうですよ。」
小太り産業:「そうなの!?」
人事担当者:「体重計を捨てたそうです。”重力に魂を縛られている人にはなりたくないっ!”と言っていましたよ。」
小太り産業医:「それって、ガンダムでのシャアの言葉の引用だよね・・・。単純に体重から逃避しているだけでしょ。」
小太り産業医は本格的に産業医活動する前は循環器内科医として、10年以上総合病院で働いていました。その時の経験から”今の私は本当の私じゃない症候群”を発見したのです!
戴帽式を済ませ、国家試験に合格した、若く希望に満ちた看護師さんたちが病院に就職します。しかし、自分が思い描いていた理想の”白衣の天使”像とはほど遠い職場環境に置かれることが多々あります。
そのような日々が数年続くと・・・、
「私はもっと輝いていたはず!」
「何でこんなに自分は疲弊してまで働くの?」
と感じ始めます。それが、発症です!
小太り産業医はこれらの症例を観察していると多くの事に気づき、病名を付けました。
それが、”今の私は本当の私じゃない症候群”です。
好発年齢および性別は20代後半~30代前半の女性。ある程度仕事をこなせるようになり、しかも後輩に教える立場になってきた方々が多いです。
小太り産業医が観察してきた症例は看護師さんばかりなので、何とも言えませんが一般的な女性会社員にも当てはまる気がします。
原因:思い描いていた理想の自分と現状の自分とのギャップに悩むことで発症します。
症状:症状は病期(Stage)により異なりますが、病期がアップするほど逃避範囲が広くなります。
StageⅠ:仕事内容を変えず、職場を変えます。
(看護師なら別の病院に転職します。)
StageⅡ:仕事・職種を変えます。
(特徴としてカタカナや英語の資格や仕事に変える傾向にあります。フラワーアレンジメント、野菜ソムリエなど。)
StageⅢ:地域を変えます。
(職種はそのままで、田舎、離島や実家に向かいます。)
StageⅣ:国を変えます。
(短期留学やバックパッカーとなります。)
StageⅣは海外に行ってきたものの、何も得ずに帰ってくる方が多いですね。(あくまでも小太り産業医の印象です。)
そして、日本で働いてお金を貯めると、また海外に向かうというサイクルを繰り返します。日本でStageⅠ~Ⅲに改善?する方もいらっしゃいます。
また、中には本当に別の職業で成功したり、田舎や離島で看護師をしており満足を得ている方も多くいらっしゃいます。
もちろん、別の職業や海外に行ってその逃避が成功している方も多くいらっしゃいます。
この症候群に対して、的確な治療法はありません。その場にとどまり、頑張って最終的に満足を得られる方もいますし、逃避によって新しい満足を得る方もいらっしゃいます。
逃避によっても何も改善しない方もいます。
対処療法でしかないのですが、一度自分を俯瞰的に見つめることが重要だと思います。
そのやり方は様々ありますが、自分の気持ち、価値観、理想像などを書き出してみる事は効果がある印象です。
現状に悩んでいる方は、一度試してみてはいかがですか?
人事担当者:「カタカナ・英語の職業は憧れますよねぇ。でも、そんなのは言い方ですよ!」
小太り産業医:「どういうこと?」
人事担当者:「”私、農協で事務員として働いています。”を変換すると、”私、JAでOLとして働いています。”になります。」
小太り産業医:「な、なるほど・・・。」
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文責:新井 孝典(あらい こうすけ)
株式会社 なごや産業医事務所:http://nagoya-sangyoui.com/
代表取締役 所長
認定産業医/労働衛生コンサルタント
認定内科医/循環器内科専門医
日本ストレスチェック協会理事・ファシリテーター
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