人事担当者:「先生、お久しぶりですね。ずいぶん、コラムをサボっていましたね。」
小太り産業医:「ごめん、ごめん。講演会や秋に出版予定の本の校正なんかがあって、忙しかったんだよ~。」
人事担当者:「Part1で続きがないなんて、低視聴率で打ち切りになったドラマ、『戦う!○○ガール』みたいじゃないですか!」
小太り産業医「例えがね・・・。まゆゆファンを敵に回すことは慎みなさい!」
人事担当者:「先生のコラムの閲覧数があまりにも低すぎて、打ち切りになったと思いましたよ。」
小太り産業:「その発言!高ストレス!」
人事担当者:「じゃあ、手を挙げてください。」
コラムを楽しみに待っていた皆さん、そうでもない皆さん、彼岸も過ぎて少し涼しくなりました。小太り産業医は多分にもれず、暑いのが大嫌いなデブに入っております。この暑さ自体がストレスなのです。
さて、前回は手を挙げない高ストレス者をそのまま放置しておいた場合をそれぞれの立場から、責任という側面から論じました。今回は具体的な対策を提案したいと思います。
小太り産業医が考えるのは以下の方法。
①面接指導への勧奨を行う(実施者、実施事務従事者がメール、電話、直接)
これは基本の「き」ですね。まずは面接指導を受けるように勧奨しましょう。ただ、面接指導を受けるとなると手を挙げることになり、心理的ハードルは高いため、説得するのは労力が必要になるでしょうね。あと、当該労働者に何回勧奨すれば良いのでしょう?
健康診断後の再検査や治療のための受診勧奨は皆さん何回ぐらいしていますか?この質問はよく受けます。法律では規定がないため、皆さんが困惑して聞かれます。私も疑問であったため、知り合いの労働衛生専門官に聞いたところ、意外な回答が帰ってきました。
「そんなの一回で良いでしょう。皆さん、大人なんだし。そこに労力をかける必要ないですよ。あとは自己保健義務ですよ。」
確かにそうなんですよ。労働者の皆さんは大人なんだから。
というわけで、面接指導への勧奨は一度で良いでしょう。
②補足的面談への勧奨を行う(実施者、実施事務従事者がメール、電話、直接)
高ストレス者に本当に該当するかどうかを判断するために、マニュアルでは補足的面談を活用することも想定しています。補足的面談は実施者になれる医師、保健師、研修を受けた看護師、精神保健福祉士だけではなく、その他の心理系職種である産業カウンセラーや臨床心理士も面談を行うことが出来ます。
さらに、手を挙げる必要でないため面談を受けるための心理的ハードルも大幅に下がります。このような位置づけから、小太り産業医は補足的面談を活用しようかと考えています。
この勧奨も一度で良いかもしれませんが、手を挙げない人へのセーフティーネットとして考えるであれば、何回か勧奨しましょう。
③補足的面談を行う
補足的面談を受け、本当に医療的介入が必要であれば紹介状を作成し、直接メンタルクリニックに受診してもらいましょう。メンタルクリニックから診断書がでれば、そこで改めて産業医面談を行い、就業上の措置を講ずれば良いのです。
治療が必要ではないまでも、何らかの就業上の措置が必要であれば、これは面接指導を受けてもらうように説得するしかないです。補足的面談では就業制限はかけられません。医師以外の職種も面談を行うことが出来るので。そして、そもそも補足的面談は高ストレス者判定のための面談ですから。
補足的面談から特に何も必要が無ければ、リリースすれば良いでしょう。
補足的面談は真の高ストレス者かどうか見極める力が必要になってくるため、経験値が必要になります。
④別件面談を行う
面接指導も補足的面談も受けてくれない労働者への次の手です。もし、当該労働者の健康診断の結果が芳しくなければ、保健指導、健康面談の名の下に呼び出してみましょう。そしてストレスチェックの結果も見ながら、面談を行うのです。
この面談はストレスチェック制度から外れた面談であり、手を挙げる必要も無く、また会社も健康診断の結果が悪かったから産業医や保健師に呼び出されていると思いますから。
もちろん、本当に高ストレス状態であれば面接指導を受けるように説得したり、医療機関を受診するように勧めます。
⑤紹介状を渡す
これは最後の手。面接指導も補足的面談も受けてくれない労働者で健康診断の結果も何も問題が無い場合です。産業医や保健師が当該労働者を呼び出す大義名分がありません。こうなってしまうと、流石に手も足もでません。ただ、実施者として結果を知り得ながら何もしなかったとなると不作為行為と見做されかねません。
そのリスクを分散するためにも産業医は当該労働者に対して「紹介状」を渡しましょう。
宛名の医療機関は空白にして、そして「高ストレス者に該当するが、面接指導などを受けてくれないため、医療機関受診を勧めました。」という文言を書いておきしょう。後は当該労働者がそれをもって医療機関を受診してくれるかどうかですが、つまり自己保健義務を履行してくれるかどうかです。
手を挙げない高ストレス者への対応を書いてきました。しかし、これらはあくまでも姑息的手段です。本当に大事なことはセルフケアへの啓発とラインのケアの充実です。この両輪がちゃんと回ってこそ会社でのメンタルヘルスにおけるPDCAサイクルが回っていくのです。
さて、お知らせが二つ。
Ⅰ.会話にもありましたがストレスチェックに関する本を執筆中です。秋には出版されると思います。題名は仮ですが「産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり」です。私が理事を務めます日本ストレスチェック協会に所属する5人(産業医2名、社労士2名、看護大学教員1名)の共著です。
本題や発売日が決まり次第、皆様に改めてお知らせいたします。
Ⅱ.日本ストレスチェック協会ではこの度「ストレスチェックニュース( http://jsca.co.jp/news/ ) 」というサイトを立ち上げました。不安・ストレス・悩み、職場のメンタルヘルストラブルなどへの対処、ストレスチェック制度への実践的対策をサポートするコンテンツを多数用意しています。
今後は小太り産業医はそちらに投稿してから、こちらの投稿になります。是非、ストレスチェックニュースもチェックしてください!
文責:新井 孝典
一般社団法人ストレスチェック協会 理事
日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタント
株式会社なごや産業医事務所代表取締役
https://www.facebook.com/dr.occupational.physician