ストレスチェック制度、基本の「き」

さて、昨年6月に労働安全衛生省が改正され、その中の目玉として「ストレスチェック制度」が創設されました。
そして今年、平成27年12月に施行されることは、労務管理、安全衛生分野に関わる方であれば、ご存知の方も多いことと思います。

厚生労働省からは、今年の4月15日に「具体的な運用方法」を定めた省令、告示、指針等が公表されてから、Q&Aや、制度設計のための詳細を示した「実施マニュアル」なども続々と公表されています。

会社に合った制度設計をするには、産業医や衛生管理者、そして外部の健診機関やEAP会社などと連携が欠かせず、また、非常に細かいことをひとつひとつパズルを組み合わせるように慎重に行わなければなりません。

詳細について、公的機関以外からも続々と多くの情報が流されてきていますが、制度設計をする前に今一度基本に立ち返り、制度の大前提を俯瞰で捉えてみてはいかがでしょうか?

そもそも、義務化の対象は「50人以上の事業場」

まず大前提として、制度導入の義務となるのは、「50人以上の事業場」です。(50人未満は努力義務)

この「50人以上の事業場」とは、法人単位ではありません。
100人の法人でも、本社に40人、2つの支店に各30人ずつであれば対象外です。
産業医や衛生管理者の選定基準と同じ考え方です。

50人未満の事業場でも、制度導入することは望ましいことではありますが、実施する場合には義務化の対象外であっても法令に従う必要がありますので、慎重に行ってください。

おおまかな12ポイントで整理

ストレスチェック制度の概要としては、非常におおまかにまとめると下記のようなものです。

(1)ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)が目的

(2)「1年に1回以上」行う

(3)実施に当たっては、その実施体制をはじめ、詳細事項を衛生委員会などで調査・審議して規程を定める

(4)実施者は、医師、保健師、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士

(5)調査票は会社で選択可だが、「職業性ストレス簡易調査票」を用いることが望ましい

(6)ストレスチェックを受けるかどうかは、労働者の任意

(7)検査結果を会社へ通知するかは、労働者の同意が必要

(8)「高ストレス者」と判定された労働者から希望がある場合は、医師による面接指導を行う(同時に原則として、7の結果通知の同意があったものとみなす)

(9)(8)の結果、必要な場合は、時間外労働の禁止や短時間勤務、配置転換など就業上の措置等を行わなければならない(医師の意見、労働者との話し合い等を経る)

(10)これらに関して、労働者に対する不利益取扱い(解雇等)は禁止

(11)検査、面接指導の実施状況などについて、毎年、労働基準監督署に報告しなければならない

(12)検査結果を会社が把握した場合、5年間の保存義務(会社が把握しない場合は、実施者のみが保存)

制度作りには、小難しいことがたくさんあり、頭を悩ませることも多いものですが、これらを念頭に置いておけば、制度作りの途中で迷いそうになったときでも、基本に立ち返ることができるでしょう。

宮﨑 貴幸
社労士オフィスみやざき 代表(http://www.som-net.com
特定社会保険労務士、産業カウンセラー