ストレスチェック制度施行間近! 義務化対象外となる50人未満事業場のための助成金

平成26年6月に成立、公布された改正労働安全衛生法により、平成27年12月から施行されることとなったのが「ストレスチェック制度の義務化」です。

義務化の対象は「従業員数50人以上の事業場」ですが、「従業員数50人未満の事業場」で制度を導入した場合、厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として、独立行政法人 労働者健康福祉機構が助成金の取り扱いを始めています。

どのような助成金か?

名称は「ストレスチェック実施促進のための助成金」といいます。助成金の概要は下記のとおりです。

1.助成金の概要
事業場の所在地が同じ都道府県である複数の「従業員数50人未満の事業場」が、合同でストレスチェックを実施し、また、合同で選任した産業医からストレスチェック後の面接指導等の産業医活動の提供を受けた場合に、各事業主が費用の助成を受けられる制度です。

2.助成金を受けるための要件
まず、50人未満の事業場で集団を形成し、支給要件を満たしているかの確認を受けるため、あらかじめ労働者健康福祉機構への届出が必要です。

~届出前に、次の5つの要件を全て満たしていることを必ず確認しましょう~
①同一の都道府県内にある複数(2から10まで)の50人未満事業場で集団を構成していること。
②集団を構成する事業場の事業者が産業医を合同で選任し、ストレスチェックに係る産業医活動の全部又は一部を行わせること。
③ストレスチェックの実施者及び実施時期が決まっていること。
④集団を構成する全ての事業場において、ストレスチェック及び面接指導を行う予定であること。
⑤集団を構成する事業場の代表者と②の産業医(合同選任産業医)が同一者でないこと。

3.助成対象
①ストレスチェック
年1回のストレスチェックを実施した場合に、実施人数分の費用が助成されます。
②ストレスチェックに係る産業医活動
ストレスチェックに係る産業医活動について、実施回数分(上限3回)の費用が助成されます。

~ストレスチェックに係る産業医活動の例~
・ストレスチェックの実施について助言すること
・ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること
・ストレスチェックの結果について、集団分析を行うこと
・面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること    など

4.助成金額
①ストレスチェックの実施
一従業員につき500円

②ストレスチェックに係る産業医活動
一事業場あたり産業医1回の活動につき21,500円(上限3回)

※それぞれの上限額なので、実費額が上限額を下回る場合は実費額が支給されます。

5.届出・申請の期限
①小規模事業場団体登録届
平成27年6月1日~平成27年12月10日まで

②ストレスチェック助成金支給申請
平成27年6月15日~平成28年1月31日まで

利用価値はあるのか?

もっと利用しやすく、また額も充実した助成金制度が出るかと期待していたのですが、予想外の内容の助成金が創設された印象です。また、導入費用(制度設計等)に対する助成があると、制度の浸透等にも一役を期するのですが、実施のみに対する内容となっているため、効果は限定的かもしれません。

助成金要件の主となる「複数事業場で合同」となると、グループ会社や事業主団体で利用することが想定できるでしょう。個別の小規模事業場というよりも、「法人的に大きな会社で複数事業場を設置していて、各事業場単位では義務化対象外」という形態が対象と考えるのが自然かもしれません。たとえば、小売業や飲食チェーン店などが該当させやすいでしょう。法人として多数の従業員を抱えていれば、各事業場単位で対象外となっても、対策を打ち出すべきと考えられるでしょう。

注意点など

6月から受け付けが始まりましたが、現状ではそれほど賑わった印象はありません。まだ制度の義務化が施行されていないこと、小規模事業場のみが対象となっていること、などが理由かもしれません。しかし、原資がどの程度あるのかは見えていませんが、もしこの助成金が人気化した場合には、上記5の期限内であっても締め切られることは容易に考えられますので、もし活用を検討する場合は早めの行動が得策でしょう。

また、助成金の期間が、制度施行前に動き出す必要があることも要注意です。制度施行後すぐに、登録も支給申請も終了してしまうので、あらかじめやっておく必要があるでしょう。

なお、労働者健康福祉機構のホームページに申請等についての詳細が掲載されています。
http://www.rofuku.go.jp/sangyouhoken/stresscheck/tabid/1005/Default.aspx

他の助成金も含めて全体としていえることではありますが、「助成金を目的」にして制度を導入することは避けましょう。あくまでも「助成」であってそれによって必要以上に得をすることはありません。自社に不要なものを取り入れると、会社の負担が増えるばかりです。目的は「会社を良くするための制度の導入」で、助成金はその補助です。この視点だけは忘れずに。

宮﨑 貴幸
社労士オフィスみやざき 代表(http://www.som-net.com
特定社会保険労務士、産業カウンセラー