ストレスチェック制度が始まると、誰もが年に1回は、「ストレスとは何か」と意識するようになるでしょう。
その時に、ストレス要因は、「会社だ!」、「上司だ!」などと原因(要因)を追求することは、労使の対立になりかねません。この対立の構造をそのままにしてストレスチェック制度開始すれば、会社は、制度の不備だけでなく社員たちとの感情的なわだかまりなど、いろいろなリスクを背負うことになるでしょう。
労使の問題は多くの場合、制度の不備があるから突かれるのではなく、会社に対する感情的なわだかまりや怒りを抱えた社員が制度の不備を探して見つけて突くのです。ですからリスクを減らすのに最も効果があるのは、会社と社員の感情的わだかまりや誤解を解くこと、会社と社員の対立の構造を解消することなのです。
ストレスチェック制度の開始後に目指すのは、労使の対立ではありません。労使が一緒に、明るく、楽しく、前向き、オープンに、個人も会社もこころの健康に責任を持ち、メンタルヘルス不調者を減らしましょうというような企業文化の育成のお手伝いをすることです。
日本ストレスチェック協会では、ストレスを従来の考えではなく、新しく定義し直して、その対策とともに普及するという活動をしていますが、そうしたストレスの新しい捉え方、対応も新制度導入の際に検討してみることもまたひとつの可能性を増やすことかと思います。
厚生労働省の考えるストレス
厚生労働省の資料ではストレスについて、ストレス要因、ストレス耐性、ストレス反応という3つの言葉を使って説明しています。
ストレス要因とは、ボールを押さえつけて凹ませる圧、押さえつける力のことをいいます。その圧に対してボールが凹まないようにはね返す力、ボールの弾力をストレス耐性といいます。そして、圧がかかった時にパーンとボールが割れてしまわないように、ある程度の弾性をもってボールは凹むわけですが、その歪みがストレス反応です。
この説明はとても丁寧ですし、ストレスについて、間違いはないと思います。わかりやすいと思います。しかし、実際に、たとえば職場でのストレスということを考えたときに、この説明を元に考えると、「ストレス要因」という言葉から即座に「あの部長が!」とか、「会社がストレス!」などと原因探しの方向や、過去に注意が向いてしまう傾向があります。それはあまり良いことではありません。それでは、実際に前向きにストレス対処ができず、あまり実用的ではないと考えられるのではないでしょうか。
次項では、一般社団法人 日本ストレスチェック協会がストレスをどのように定義し、ストレスチェック制度開始後に対処していきたいと考えているのか、ご説明いたします。