みなさん、こんにちは。キャリアコンサルタントの奥 富美子です。
「コロナ禍の生活が若者の将来への不安に与える影響」を日本赤十字社が調査しています。若者(高校生~大学院生)には自分自身の不安を、保護者には子どもに抱く不安を、教員には生徒・学生に抱く不安を聞いています。
https://www.jrc.or.jp/press/2022/0106_022802.html (2022.1.6発表)
「コロナ禍が若者の【成長・経験】へ与える不安」を見てみましょう。若者の第1位は、「新しい人間関係を築くのが難しいのではないか」(高校生:30.0%、大学・大学院生:33.0%)です。高校教員の一番の不安(46.0%)も、この項目です。
若者の第2位は、「対人コミュニケーションが身に着かないのではないか」(高校生:30.0%、大学・大学院生:27.0%)です。保護者も同様(高校生を子どもに持つ親:29.0%、大学生・大学院生を子どもに持つ親:28.0%)です。
「対人コミュニケーションが身に着かないのではないか」に関する教員の不安は相当のようです。高校教員:40.0%、大学教員:48.0%となっていました。大学教員が感じる不安の第1位は、この項目でした。日常で大学生を相手に仕事をしている私も、同じように感じています。
私たちは、コロナ禍で「リアル対面で、人とコミュニケーションをとる」機会を逸しました。しかし、「オンラインツール」が発達し、「人とコミュニケーションをとる」機会は、工夫をすればできる社会になっています。実際には会えなくても、カメラを通して相手の表情を見ながら会話することができます。地方に住む人とも、簡単に顔を合わせることができます。
便利な社会になったことを活用して、「対人コミュニケーションの機会」を減ったままにせずに機会を提供することが、保護者や教員など大人たちの役目だと考えます。
私が働く大学では、2022年度から対面授業が始まっています。「全員マスク、席は離れて」であっても、友だちとニコニコと語り合っている様子を見ると楽しそうです。半面、「隠れていてOK。無言でOK」としている学生もいます。「人とは会話しない/返事はしない/発言・発表はしない」と決めているようです。「話をさせるなんてありえない」と、提出課題のなかに文句を入力して送ってくる例もあります。こうした学生を見ていると、「人とコミュニケーションをとることは、良いことだよ。楽しいことだよ」の気持ちを育てるにはどうしたらいいのか、悩ましく思います。
日本ストレスチェック協会の講座『不安とストレスに悩まない7つの習慣』では、「好きなことをしよう」とすすめています。「好きなことがない。趣味はないけど、仕事が趣味だから、それでいいんだ」という人が、定年退職後、「口をきく相手がいない」という現実に直面する例は少なくありません。こうならないように、若いときから「好きなこと」を持っていてほしいのです。
「好きなこと」は、「仲間がいて、自分の居場所があって、コミュニケーションの機会があって」と、人生を豊かにする重要なものです。人とのつながりがあれば、相談相手にもなってもらえます。「一緒に」と感じることができ、孤立感も避けられます。「好きなこと」を見つけましょう。増やしましょう。続けましょう。
調査結果にあった若者の不安、「新しい人間関係を築くのが難しいのではないか」も、「対人コミュニケーションが身に着かないのではないか」も、払拭するには「人とコミュニケーションをとる」ことを実践し、経験を積んでいくことが必要です。「人と口をきかない」のでは前進しません。「やってみる/行動してみる」ことが第一歩です。
若者に「対人コミュニケーションの機会」を提供しましょう。「言葉にして、声に出して、相手に向けて言う」練習をしていかないと、「対人コミュニケーションの力」はつきません。大人が若者に「問いかける」ことから始めます。
若者に「趣味は? 好きなことは?」ときくと、「別に~」と言い、しばらく待っていると「ゲーム」と単語が返ってきます。ここであきらめることなく質問をつづけましょう。「そのゲームのどんなところが好きなのか」を聞いてみてください。戦いが好きなのか、自分の力がアップするの面白いのか、ヒーローがカッコいいのか、いろいろと深掘りして聞いてください。「自分の思いを、他者に語る」ことをしてもらいます。「自分を伝える」経験をひとつ、積むことができます。
いちばん大事なことは、私たち大人のふるまいかもしれません。大人が、「自分の『好きなこと』を存分にやって、その仲間たちと楽しそうに語り合う」場面を、若者たちに見せていくことにしましょう。
奥 富美子(おく ふみこ)
国家資格キャリアコンサルタント
きゃりあす 代表
https://www.career-as.com/