レジリエンス ~折れない心~


東日本大震災から、もうすぐ6年半。
 この8月、東北各地では 蓮や睡蓮が見頃を迎えています。

 蓮の花は、泥が汚ければ汚いほど美しい大輪の花を咲かせる花です。
 真水からは立ち上がらず、泥水の中からしか立ち上がりません。
 「泥」を人生に置き換えるならば、辛いこと・悲しいこと・大変なこと…

 心理学者 イローナ・ボニウェル博士は、「厳しい状況でもネガティブな面だけではなく、ポジティブな面を見出すことができる人が、逆境を乗り越えることができるのです」と語りました。(NHK『クローズアップ現代』より)

「逆境」の乗り越え方
 仕事でも、人生においても、人は、予期せぬ「逆境」に対し動揺し、ショックを受け、傷つき落ち込み、そのまま這い上がれなくなる場合と、同じ出来事が起きても、そこから這い上がり、不思議なほど強く逞しく成長を続ける場合と、大きく2つに分かれる傾向があります。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)とレジリエンスの関係についても、様々な研究がなされています。
 レジリエンスとは、もともと「跳ね返す」「柔軟性」「復元力」の意味で使用されてきた物理学用語ですが、今日の医学・心理学の領域では、病気を跳ね返す「因子・力」として使用されはじめ、最近では「精神的な回復力」を示す言葉として使われるようになってきました。アメリカ心理学会では、レジリエンスのことを「逆境やトラブル、強いストレスに直面した時に、適応する精神力と心理的プロセス」と説明しています。「再起」や「再生」という言葉も、レジリエンスの意味としてイメージしやすいでしょう。

PTG(心的外傷後 成長)の現れ方
 共通のトラウマやストレスを受けながら、何故、ある人はPTSDとなり、ある人はPTSDに至らなかったのか?という疑問があります。トラウマやストレスを受けた時、レジリエンス因子が強力に働くと、PTSDに罹ることなく、その苦境を乗り越えていくことができる、といいます。レジリエンス因子は、トラウマやストレスを防御する「防御因子」と、回復を促す「回復因子」として働くと考えられます。そして、回復因子が強力に発動する時、ストレスやトラウマは、かえって心理的、人格的に成長を促すのだそうです。これが、PTG(心的外傷後 成長)です。

「レジリエンス因子」とは
 心理学者の小塩真司(おしお あつし)氏は、レジリエンスを導く心理的特性を「精神的回復力」と呼び、その因子分析から、次の3つを示しています。

 ≪レジリエンス因子≫
 1.『新奇性追求』…新たな出来事に興味を持ち、様々なことにチャレンジしていこうとする力
 2.『感情調整』…自分の感情をうまく制御できる程度を表す調整力
 3.『肯定的な未来志向』…明るく肯定的な将来を期待・予想し、その将来に向けて努力しようとする力

 レジリエンスは、これら3つの因子で構成され、また苦痛に満ちたライフイベントを経験したにも関わらず自尊心が高い人は、自尊心が低い人よりもレジリエンスが高い、としています。

レジリエンス・マッスルの鍛え方
 少し難しい説明になってしまったので、ここで 数ある「レジリエンス」に関する書籍の中から、わかりやすい一冊をご紹介したいと思います。
 『「レジリエンス」の鍛え方 -世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!-』 (久世浩司(くぜ こうじ)著 / 実業之日本社)という書籍があります。こちらでは、なぜ今、レジリエンスが必要か?鍛えるために必要な考え方は何か?などが、わかりやすく書かれています。この書籍の中で書かれているヒントは、私達、日本ストレスチェック協会のメンバーが日頃、皆さまにお伝えしている『不安とストレスに悩まない7つの習慣』にも通じる、前向きな捉え方、対処の仕方、などについてです。

 久世氏は「レジリエンスを身に付けている人は、合理的に物事を捉える。しなやかに困難に対応する。たくましさを持って逆境を乗り越える。そして、つらく痛い体験から価値ある何かを学び、そのたびに成長する。」と語りますが、ストレスから逃げずに、上手にそれを受け入れ、適応することで、心の筋肉「レジリエンス・マッスル」が鍛えられる、と言います。

 それらを7つにまとめたものを紹介すると…

 1.ネガティブ感情の悪循環から脱出する!
 2.役に立たない「思いこみ」をてなずける
 3.「やればできる!」という自信を科学的に身に付ける
 4.自分の「強み」を活かす
 5.こころの支えとなる「サポーター」をつくる
 6.「感謝」のポジティブ感情を高める
 7.痛い体験から「意味」を学ぶ

~このあと更に、具体的なヒントや、そこから得る「報酬」について詳しく書かれています。

レジリエンスがもたらす「報酬」
 レジリエンスについては まだまだ奥が深く、ご紹介したい内容が多くあるので、今後も時々この記事の中で書かせて頂こうと思います。いずれにしても、修羅場を乗り越えた人、もがき奮闘した人、にもたらされる“報酬”として、「生きている」ことに対する“感謝の気持ち”が増すことは間違いないようです。

 ここ数年の夏は、毎年のように全国各地で水害や土砂災害が発生し、今年は九州、秋田などで甚大な被害が出ています。仕事上の困難だけではなく、いつどこで同じような「まさか!」が起きても不思議ではありません。想定外のことは、いつ、誰の身に起きてもおかしくない、と心得るべきです。

 レジリエンスを鍛えるには、しなやかに、どんな困難をも受け入れる、柔軟で逞しい“折れない心”を育む気持ちと“人生への感謝”が、必要不可欠です。

 蓮の花のように、一番汚い泥水の中から、何ものにも染まらず、その泥さえ微塵も寄せ付けないまま、すっくと立ち上がり、大輪の花を咲かせるような、強くて しなやかな“折れない”人生を送りたいものですね。

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荒木 三香(あらき みか)
カウンセラー/ 色彩心理コンサルタント
Couleuve -クルーヴ- 代表
URL: http://www.couleuve.com/
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